新川和江「ロマネスク」[2024年09月03日(Tue)]
ハナトラノオ(花虎の尾)。
例年、八〜九月に出会う。
花言葉は「希望」とのこと。花穂を揺らす風に夏の退場を感じる季節にふさわしい。
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ロマネスク 新川和江
真夏の森はぎっしりと書きこまれたみどりの小説のようだ
水引草がところどころに朱筆をいれる
神よ 神よ なにが間違っていたのだ?
どんな背徳がこの森かげにあったのだ?
新川の詩集『比喩でなく』(地球社、1968年)の中では、代表作「わたしを束ねないで」に続くU「午後の庭」の最初に登場する詩。
タイトルの「ロマネスク」、詩中に「小説のようだ」と、通常の意味は示されているが、それと同時に、詩集全体および詩集前半のタイトルである「比喩でなく」と韻を踏んでいるように思えてならない。
(「だからどうした」というツッコミが聞こえてくるけれど。)
※詩は『新川和江文庫2 ひとつの夏 たくさんの夏、ローマの秋・その他、比喩でなく』(花神社、1988年)に拠った。