石川逸子「埋めてながして」[2024年08月16日(Fri)]
◆台風7号、当市でケガをされた方がいるものの、総じて各地の被害は少なくて済んだ様子、昨日のお祈りもいささかは効き目があったかも知れない。案山子様さまである。
◆さりながらTVのニュースは延々と台風関連。
帝国日本敗戦の日に、ガザではついに犠牲者四万人を超えたと伝えられたばかり(瓦礫の中に埋もれた死者も1万余という)。
停戦交渉に向けた動きも細々ながら続いてはいるというが、大きく焦点化して伝えられてはいない。知りたい人はごく少数でしょ、とナメていないか、視聴者を。
◆13日、生まれたばかりの双子の我が子を殺された父親がいる。
ガザ北部から中部へ、転々と避難を続ける中で、さる8月10日に生まれた二人を、イーセル(女の子)・アーセル(男の子)と名づけて祝ったばかりだった。赤児を世話していた妻とその母も、イスラエル軍戦車の犠牲となった。
「この子たちが何をしたというのか。」
――絶望の底に突き落とされた父親のことばだ(「しんぶん赤旗」8月16日、カイロ=秋山豊特派員の記事)。
◆一方で、敗戦の日8月15日に、靖国参拝に及んだコイズミ某議員もいた。
かつて、その父も集票のために靖国参拝をやって見せた。親子だとはいえ、そんなことまで真似る必要もあるまいに。
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埋めてながして 石川逸子
見たくないものは
深夜そっと
庭に深く埋め 土をかぶせます
(月よ 見ていたね)
聴きたくないものは
海辺へ駆けていって
波にながします
(蟹よ 聴いていたね)
きのうもまた
心のひとはし ちぎって
庭に埋めました
(モグラよ 見ていたね)
今日もまた
海辺へ駆けていって
聴いてしまった耳を洗います
(紫貝よ 聴いているね)
日々 埋めて ながして
これはもう 仕事のようで
重くなった心は すぐ軽くなり
また重くなって
おろかな 往ったり来たりを
月が モグラが 蟹が 見ています
あったかい その目たち
(明日もきっと祭りのようににぎやかだね)
詩集『ロンゲラップの海』(花神社、2009年)より