わかれ[2024年08月02日(Fri)]
テッポウユリ
◆従兄、逝く。
幼き日、ディケンズの『クリスマス・キャロル』で本の世界に導き入れてくれた。
ともに遊んだ日々は、振り返ればせいぜい1キロ四方の世界だが、そこにいつでも立ち返れるのは、同じ時間を共有した人間が存在していればこそだった。
一度、石を投げつけるほど激しくケンカしたことがある。
理由など思い出せないが、半べそをかいている自分と、従兄の困ったような顔、二人のいた軒下にできた陰だけは記憶にある。
ちゃんと謝っていなかった気がしてならない。
確かめようにも、もう居ないのだ。
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たそがれ 谷川俊太郎
たそがれくさかれ
ほしひかれ
よかれあしかれ
せがれをしかれ
たそがれくまかれ
きつねかれ
けれどおちうど
かるなかれ
たそがれはなかれ
みずながれ
なかれたたかれ
かれののわかれ
『自選 谷川俊太郎詩集』(岩波文庫、2013年)より
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