ウソつき[2024年07月27日(Sat)]
◆7月24日、イスラエルのネタニヤフ首相は、米連邦議会における演説で「ラファで民間人は一人も殺していない」と述べた由。
誰もがハマスだから殺しても当然だと言いたいのか。
このような人物を招待し傾聴して見せ、拍手さえする。
これが現実だから、国民は黙って受け入れろと言いたいのか。
いや、黙らない人たちが議事堂の外にもイスラエルにもいたし、議事堂の中にもいた、「戦争犯罪人」とネタニヤフ氏を名指しするプラカードを持って。
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うそとほんと 谷川俊太郎
うそはほんとによく似てる
ほんとはうそによく似てる
うそとほんとは
双生児
うそはほんととよくまざる
ほんとはうそとよくまざる
うそとほんとは
化合物
うその中にうそを探すな
ほんとの中にうそを探せ
ほんとの中にほんとを探すな
うその中にほんとを探せ
『自選 谷川俊太郎詩集』(岩波文庫、2013年)より
◆この詩の大事なメッセージは、最終連の対句、
「ほんとの中にうそを探せ」
「うその中にほんとを探せ」
だろう。
◆ほんとらしく装ったことばが新聞やテレビに溢れている。
その中に仕込まれた「うそ」を見抜く目と耳を持つのは難しい。
だが、よく鍛えられた目と耳を持たなければ、いつだって私たちは「ダマされる」ことになる。
それどころか、その「うそ」を、さらに広めて殺人に加担することになる。
◆いっぽう、小説や詩には「うそ」があふれている。
だが、それは言葉の森の向こうにある、揺るがぬ「ほんと」を見出すためにある「うそ」だ。
その「ほんと」に出会わないと、森は枯れ果て、世界は真実の死骸ばかりが累々と横たわる砂漠と化す。
◆「うそとほんと」の「化合物」が人の魂に正しく点火するなら、世界は変わる。