山口雅代「にげてる人」[2024年07月12日(Fri)]
にげてる人 山口雅代
ニュースで 見ました
せんそうで おわれてゆく
人たちを
車に にもつ つんで
お父さんが 子どもを だいて
にげて います
はまべにたちどまって
島の方を 見ています
どこへ にげようかと
まよって いるらしい
かみさまが
あの人に
舟を
出して下さると いいのに
新版『ありとリボン』(編集工房ノア、2023年)より
◆小学校2年生(1950年)の時の作品20篇のうちの一つ。
とすると、「ニュースで」みた、というのは、朝鮮戦争のことだろうか。
ここでも詩人は、人々の視線に自らの目を沿わせようとしているようだ。
それは戦火を逃れて逃げる人たちの心にわが心を溶かし合わせようとすることだ。
その後も、ベトナムで、シリア、アフガニスタンで、ウクライナ、そしてパレスチナで、逃げ場のない、逃げる手だてのない人たちが今なお――