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若尾儀武『戦禍の際で、パンを焼く』3[2024年05月06日(Mon)]

ニオイバンマツリ匂蕃茉莉DSC_0387.jpg

ニオイバンマツリ(匂蕃茉莉)という花だそうだ。
2つの株が混ぜ植えしているのかと思ったらさに非ず。同じ株に2色の花が咲いている。
調べたら、咲き始めは紫だが、しだいに色が薄まって白い花に変じるのだという。
玄妙というべきか。

*******

戦禍の際(きわ)で、パンを焼く  若尾儀武

3 

鉛色した雲が空一面を覆っている
風はない
鳥が数羽
鳴き声もたてずに
雑木林を目掛けて錐のように飛んでいく

ここは何処か
眼前でありながら
堰を切ってなだれ込む違和がある

匍匐で進む青年
迷彩
野戦銃
照準

わたしは小さな公園のベンチに腰かけている
そして十字に交叉する枝の交点に世界がとまっているのをみる


『戦禍の際で、パンを焼く』(書肆 子午線、2023年)より

◆「わたし」のいる平時の世界に、戦場がいや応もなく滲出してくる。
それは、報じられる惨状に「わたし」の目も心も釘付けになっているからだ。
向こうとこちらの世界の区別があやふやになる、というより、画面の中の向こうの世界であるはずの戦場に「わたし」はいつの間にか身を置いている、と言ってよい。

◆最終連、「小さな公園」は、なるほど平和なこちらの世界のように思えるが、実はキーウの、ヘルソンの、あるいはマリウポリの街の一画であるのかも知れない。
「十字に交叉する枝の交点」は茂みの中から一人の市民に照準を合わせた銃口であると同時に、それが向けられた一人の人間の凍り付いた眼、もしくは、その人間から兵士に向けて鋭く投げ返された怒りと深い悲しみの眼でもあるのではないか。


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