
まど・みちお「かがみ」[2024年02月22日(Thu)]
かがみ まど・みちお
この地球のうえには
ほうぼうに置いてあります
海や
川や
湖水(みずうみ)など
さまざまな美しいかがみが
それが そこに置いてある…
ということよりも相応(ふさわ)しいことは
この世の中にないかのように
それは 私たち
生き物だけのためにでしょうか
山や
雲
太陽や
星たちでさえ
じぶんの顔を見たくなることが
あるからではないでしょうか
谷川俊太郎・編『まど・みちお詩集』(岩波文庫、2017年)より
◆異様な暖気から一転して一ケタ台の気温に戻り、雨シトシトの肌寒い日がしばらく続く模様だ。
回覧板を隣家に駆け足で届けた帰り、手鏡くらいの水たまりが出来ていて思わず足を停めた。
頭の片隅に上の詩が揺曳していたのかも知れない。
ポツポツ落ちくる雨に乱されて、映るのはわがぼんやりした影のみ。
家の中の鏡すらめったに見ない習慣だけに、よけい貧相に思える。
誰がこんな所に鏡を……と、うらんだりはしないけど。