
まど・みちお「うつくしい ことば」[2024年02月20日(Tue)]
うつくしい ことば まど・みちお
たのしそうに 口にしあっている
ーともだち
という うつくしい ことばを
ともだちで ないものには
しらんぷり しておこうよ
という いみにして…
しみじみ つぶやきあっている
ーにくしん
という しみじみした ことばを
あかの たにんなどは
ほっとこうよ
という いみにして…
谷川俊太郎・編『まど・みちお詩集』(岩波文庫、2017年)より
◆「ともだち」も「にくしん」も、〈そうでない者たち〉を蚊帳の外に置いたままにするというのが前提になっているのだろう。
したがって、彼らの間で交わされることばは、彼ら以外の人々にとって、開かれたことばではなく、触れようとすれば棘で傷つける鉄条網のように、しばしば排除や敵意をむき出しにする。
内輪の人々の親密さと反比例するみたいにして。
〈しらんぷり〉や〈ほっとく〉のが文字通りなら、害は少ないはずなのに、大人の世界や、国と国同士の場合は、鉄条網だけでは満足せず、それを通り越してミサイルやドローンを仕掛けてくるから始末に負えない。