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四元康祐「回路」[2023年03月17日(Fri)]

ウンナンオウバイDSCN0653.JPG
ウンナンオウバイ

*******


回路    四元康祐(よつもとやすひろ)


赤ん坊が初めて笑った
光線すらを捩じ曲げる巨きな力が
漲り溢れている夜空の下で
その一瞬、肉眼には辿れない微細な回路が繋がったのだ


  現代詩文庫『四元康祐詩集』(思潮社、2005年)より

◆写真家の藤原新也氏は、一歳のときの記憶がある、と語っていたが、ふつうの人は覚えていない。
赤ん坊の成長が大人にとって驚きで、初めて目撃する「事件」の連続として映るのは、そのためだろうか。

微細な回路が宇宙にまっすぐ繋がったと気づくためには、大人もまっさらな眼を必要とする。

ひょっとして宇宙の始まりにあったのは、笑いだったかも知れない。そう思うのは愉快だ。
自分もひょっとしてこんな風に笑ったのかもしれない、と感じられるのは、さらに愉快だ。



中山郁子「音楽室」[2023年03月17日(Fri)]

DSCN0656.JPG
ムスカリ。身を縮めてこの周りで隠れん坊したくなるような不思議な植物だ。


***


音楽室  中山郁子


少年がホルンを吹いている

校庭の片すみで
ヤマボウシはじっと聴き耳をたてている

三階の部屋の窓から
私はヤマボウシを見ている

淡い水色の光の粒になって
ちちはは は 私を見ている

誰かが「魔王」を歌い始めた



中山郁子詩集『サンクチュアリ』(土曜美術社出版販売、2020年)より


◆ホルンの響きに載せて、視覚の上でも〈少年→ヤマボウシ→私→ちちはは〉と遷移してズームアウトする感覚がある。
ホルンが狩りや出陣の合図として用いられた起源への連想があるのだろう。

加えて、「生(せい)」の背中に羽織った薄物のような死。
それは「私」の背を空から見ている「ちちはは」のイメージと重ねられる。

そのように親が子より先に旅立つのは順縁だが、そこにシューベルトの「魔王」が聞こえて来る。
馬上、父の背で息絶える子、すなわち逆縁の物語が歌われ始めるのだ。

◆連想が紡ぐ短いドラマ。視覚+聴覚+触覚が重層しながら、しかも動きがある。



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