
四元康祐「回路」[2023年03月17日(Fri)]
ウンナンオウバイ
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回路 四元康祐(よつもとやすひろ)
赤ん坊が初めて笑った
光線すらを捩じ曲げる巨きな力が
漲り溢れている夜空の下で
その一瞬、肉眼には辿れない微細な回路が繋がったのだ
現代詩文庫『四元康祐詩集』(思潮社、2005年)より
◆写真家の藤原新也氏は、一歳のときの記憶がある、と語っていたが、ふつうの人は覚えていない。
赤ん坊の成長が大人にとって驚きで、初めて目撃する「事件」の連続として映るのは、そのためだろうか。
微細な回路が宇宙にまっすぐ繋がったと気づくためには、大人もまっさらな眼を必要とする。
ひょっとして宇宙の始まりにあったのは、笑いだったかも知れない。そう思うのは愉快だ。
自分もひょっとしてこんな風に笑ったのかもしれない、と感じられるのは、さらに愉快だ。