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左川ちか「風」[2022年09月01日(Thu)]


風   左川ちか


単調な言葉はこわれた蓄音機のやうに。
草らは真青な口をあけて笑ひこける。
その時静かに裳
(も)がゆれる。
道は白く乾き
彼らは疲れた足をひきづる。
枸橡
(くぬぎ)色の髪の毛が流れる方へ。



島田龍・編『左川ちか全集』(書肆侃侃房、2022年)より

◆1932年の作。

「風」をモチーフに、映画の一場面を見るかのようだ。

風に吹き分けられる草たちは、呻き歩む者たちのみじめな姿に笑い転げていたが、疲れ果てた彼らを従えて静かに進む者の裳裾(もすそ)に気づき、薙(な)ぎ払われたように押し黙る。

背を押す風に身を任せて向かう先に待つのは妻や恋人であろうか、あるいは父母やわが子ら。

厳かなものの渡御の列であるからには、「マクベス」のように森の木々も列に加わり、そこに棲むあらゆる生きものたちまでがこぞって扈従(こじゅう)していて不思議はない。

*「くぬぎ色」とは薄茶〜焦げ茶、あるいはもっと黒味を帯びた色合いまであるようだから、読む者の気分のグラデーションに応じて想像の絵筆を揮えば良い。


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