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境節「夏」[2022年07月20日(Wed)]


夏   境 節


みんなの出発を見送って
ひとり ここに残ってしまった
「十三さいの夏」という詩を
今日 書くはずだった
いつか きっと書くよ
詩集『十三さいの夏』を 出したい
今は隣国になった都市で
日本の敗戦を
十三さいの夏に経験した
無邪気すぎる少年のような 少女だった
「日本は敗けるよ」 と同年の少女がいった
校庭にしゃがんで 地面をみつめて
その友は やさしい少女だった
「そんなことは無(な)い」と口に 出さなかったが
信じられなかった
それから半月たって
日本は敗戦
からだが ふるえる夏
わたしは 美しい少女にはならずに
少年のように生きて
空を にらんでいる


境節(さかい せつ)詩集『十三さいの夏』(思潮社、2009年)より


◆「みんなの出発」は、今生の別れを指すのだろう。同時に、十三歳、ソウルで迎えた敗戦の結果散り散りにならざるを得なかったうからやから、友らの生存を賭けたそれぞれの旅が重なる。

空をにらむ抗いのまなざしは、無答責をタテに、もういいかげん忘れなよ、と繰り返す政治の声にも向けられている。


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