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〈距離〉は大切か? 友部正人「遠来」[2022年06月28日(Tue)]

友部正人詩集『空から神話の降る夜は』(1986年刊)の掉尾を飾る次の詩、三分の一世紀後のコロナ禍、「ディスタンス」が人間関係の親疎を物語るようで気にせずにいられなくなった2020年代の「いま」を予告していた感じがある。

***


遠来   友部正人


君がニューヨークにいるのと同じように
ぼくは東京にいる
君がニユーヨークでアパートを借りているのと同じように
ぼくは東京で借家住まいだ
君はニューヨークで新しい友だちを見つけただろうか
ぼくは東京で見つけたよ
そしてぼくも君も東京とニューヨークで
歌のことを考えている

君がインドにいるのと同じように
ぼくは東京にいる
君がインドで丘の上の大木を見上げているように
ぼくは東京で庭の木を見上げている
君はインドで赤いけさを着てお祈りしているという
ぼくは東京でコーヒーを飲みながら
お祈りしているよ
そしてぼくも君も東京とインドで
湯気をたてて晩ごはんの仕度をしている

君がフランスにいるのと同じように
ぼくは東京にいる
君はフランス人の書類第一主義のやり方に腹をたて
ぼくは日本人のあいまいなやり方に腹をたてる
たまにはおいしいものを食べに行くよと
君から手紙が届いた
ぼくは東京にいておいしいものって何だろうと思ってる
そしてぼくも君も風向きが変わり
ヨットは同じ方に走りはじめている

君が台湾にいるのと同じように
ぼくは東京にいる
君は台湾に行ってアジアが見えたかい
ぼくは東京にいてこの町もわからない
こんなにたくさんの人が生きているのにという
そんな悔やしさにおそわれることはないかい
そしてぼくも君も東京と台湾で
捨てるものの無くなったドブ川をながめている

君が地球にいるのと同じように
ぼくも地球の上にいる
夜になるとたくさんの街の灯が
つながってひとつになるのを見たことがある
ぼくらはいつもどこか遠くから
ぼくらのいる星をながめている
そしてぼくも君もこの地球の上で
わかり合えないまま距離ばかりを大切にしている



◆「ディスタンス」=「距離」は、意識のありよう・想像力の働かせかた次第なのであって、「お上」のガイドラインが我々に加える掣肘(せいちゅう)に対して、常に注意深くそれを相対化することが必要だ、ということを示唆している。
権威を「絶対視」すれば、我々の友や家族を、奴隷として独裁者に差し出す結果になってしまうから。

「わかり合えぬまま距離ばかりを大切にしている」のが現実なのだとしても、同じ地球上の者同士、同じもの目撃し、同様のことを考えている、そのことさえ分かれば、あとは、つながろうとすることだけだ。



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