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友部正人「世界の言葉が音符だったら」[2022年06月26日(Sun)]

世界の言葉が音符だったら   友部正人


時々バスは大回り
たくさんの人を乗っけるために
そんな時ぼくは外を見ながら
とっても愉快なことを思いつく

世界の言葉が音符だったら
こんなに苦労することはないだろう
なにしろ翻訳は良ければ良い程
元の作品から離れていく(多分ね)

世界の言葉が音符だったら
こんなに大変なことはないだろう
色々おまじないをやらなくても
心の池の中にとびこめる

世界の言葉が音符だったら
友情だって見つかるかも
特に言葉の通じない外国で
喋りたくてもだまっていなくちゃならない時

そりゃ もちろん音符だから
受け取り方だってまちまちさ
だけど決まりがないってことで
もっと自由になるものがあるかもね

通りにあるお店に入ったら
聞き慣れない音楽がかかっていた
何世紀も前の音楽なのに
たった今語りかけられているみたいなんだ

ぼくの好きな詩の本には
みんな音符が書かれている
もちろんそれは目に見えないし
口ずさまないと聞こえないけど

金曜日の午後 バスに乗りながら
ぼくはこんなことを思っていた
少なくともぼくは音符という
世界中で通じる言葉を知っていると



友部正人『空から神話の降る夜は』(思潮社、1986年)より

◆音楽の自由さに比べたら、言葉は何とも不自由極まりない――作者のように世界のあちこちを歩いて回った人でなくとも、そう思う人は多いだろう。

翻訳を経なければ思っていることを通じ合わせることは難しいし、心底分かったと思える瞬間がなければ友情も生まれない。

「世界の言葉が音符だったら」と夢想するのは、当然だ。
無論、広い世界には、「わかり合う」ことはそんなに大事じゃない、と考える人もずいぶんいる。
(そういう人間でも、相手の無視は好まないから、「わからせる」ためにあらゆる手段を動員したりする。いわば自分の都合のために相手に不自由を強いたりする。そのために、「言葉」によるプロパガンダを重用する。)

◆音符の働きは逆で、我々を限りなく自由にしてくれる。

◆詩もまた、人間を自由にしてくれるのでなければ。



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