ブコウスキー「町の掲示板に貼られた政治家候補者の顔」[2022年06月22日(Wed)]
◆参院選公示。
毎度同じ場所に設置されるポスター掲示板、こんなところに! と、立ち止まる人の居そうにない場所に立つものも結構ある。
境川を挟んで横浜市側も藤沢市側も、日程が確定する前に掲示板を設置してはいたが、横浜市は「7月10日投票日」の文字も貼りだした掲示板になっていて、フライングではないかと疑問があがっていた。話題を提供するのも投票率をアップさせる作戦のひとつ、と企んだかどうか。(藤沢市の方は公示日の今日、一斉に投票日を明示したポスターを追加で貼った。市内各所の災害用拡声器から、期日前投票を告知する放送もあった。初の試みかも知れない。)
◆「よ党」と「ゆ党」と揶揄される人たち、この湘南の奧地まで回ってくるかどうか。来ても握手はしないと思うけれど、ミーハーだから、ツイ手ぐらい振ってしまうかも知れない。
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町の掲示板に貼られた政治家候補者の顔
ブコウスキー
中上哲夫・訳
この人物は――
めったに二日酔いにならず
めったに女性と喧嘩せず
めったに人を退屈させず
一度も自殺を考えたことがない
歯刷毛はせいぜい三本で
一度も食事をとりそこなったこともなく
一度も刑務所に入ったこともなく
一度も恋に落ちたこともなく
靴は七足
息子は大学生で
車は一年間使用車
保険証券
青々とした芝生
蓋がきちんと閉まったゴミ缶
この人物は選ばれるだろう
中上哲夫・訳『ブコウスキー詩集 指がちょっと血を流し始めるまでパーカッション楽器のように酔っ払ったピアノを弾け』(新宿書房、1995年)より
◆飲んだくれたり、喧嘩したり、また時にはひどく落ちこんだりする民衆とは異なり、堅実を額縁に納めたような経歴と暮らしぶりを笑顔にこめた「候補者」――
――むろん、辛辣な皮肉だ。取り違えるはずはないと思うけれど、念のため。