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ラードヴィッチ「泣き方講座」その1[2022年06月14日(Tue)]

『文学の贈り物 東中欧文学アンソロジー』所収のセルビアの詩人から、もう一人、ラードヴィッチのユニークな一篇「泣き方講座」、その前半を――


泣き方講座   ドゥシャン・ラードヴィッチ
                中島由美・訳


第一課 他に何もできないから

子どもは生まれると すぐに泣く
ほかに何もできないから

小さな子供は 泣く
考えることができないから
泣くことしかできないから


第二課 詩を書くように

我々は泣く 好きな人に思いが届かなくて
人生は辛い 泣くのはやさしい

我々は泣く そして運命に妥協する
我々は泣く ほかに悲しむ方法を知らないから

人生は泣くためにある

我々は泣く 詩を書くように
それは誰かのためにできる 最後のこと


第三課 幸せだとも知らないで

泣いている
不幸だと思い込んで
幸せだとも知らないで

「なんで泣いているの?」
「もう我慢できないんだ」
泣き出して はじめて悲しくなるやつもいる

道の半ばで泣く
始まりから既に遠く 終わりにもまだ遠い
すべてが遠くて とても届きそうにない


第四課 もう他にどうしようもない

泣きなさい 他に何もできないなら
泣きなさい 楽になるよ
少し泣いて 少し我慢しなさい
泣くのは楽だ 我慢するのは辛い
泣きなさい そのほうが楽なら

泣きなさい
そして考えなさい 泣いている人すべてのことを

泣きなさい 痛みを忘れて一息つきなさい
泣きなさい その方が健康にいい
泣きなさい 泣きなさい もう他にどうしようもないんだから

泣きなさい 泣きなさい
許してしまいなさい でも忘れてはいけない

泣くべき時に しっかり泣いておこう
どうせまた 次のがやってくるのだから


第五課 涙にもいろいろある

涙にも 人間と同じように いろいろある

ひかえめな人は 恥ずかしそうに泣く
泣くときにも 自分の程度をわきまえる
自分勝手な人間は 涙も出さない
幸せすぎて泣く それはまた違う涙だ
ばかなやつはばかだから 泣く
ほかに泣く理由なんかありゃしない
ちびどもは泣いているんじゃない ぴーぴーいってるだけだ
まだ本当の苦しみがないのだから 本当の涙もない
小さな苦しみと小さな涙は 大きなものの前で遠慮する

簡単に泣くのは 忘れっぽいやつだけだ



小原雅俊・編『文学の贈り物 東中欧文学アンソロジー』(未知谷、2000年)より

ドゥシャン・ラードヴィッチ(1922-1984)は、子どものための詩人として活躍。児童向けの新聞や番組制作にも携わったそうだ。
1986年に出版された詩集『泣くことについて』から9編抄録されているうち、とりあえず第一課〜第五課の五篇。

◆泣くことのほかに何もできない子供を、だからといって、バカにしているのではない。「考えることができない」からといって、無視したりイジメたりしているのでもない。

北斎なら「泣き顔百態」として描きそうな、人間の多種多様な感情表出。それは、この世に生まれ出た瞬間の泣くことに始まるわけだ。
この絶対の真理。
笑いながらこの世に現れ出る子供は、いない(たぶん)。



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