山村暮鳥「人間に与へる詩」[2022年06月07日(Tue)]

マテバシイ。
木のたたずまいに雰囲気がある。
横浜・俣野公園にて
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人間に与へる詩 山村暮鳥
そこに太い根がある
これをわすれてゐるからいけないのだ
腕のやうな枝をひつ裂き
葉つぱをふきちらし
頑丈な樹幹(みき)をへし曲げるやうな大風の時ですら
まつ暗な地べたの上で
ぐつと踏張(ふんば)つてゐる根があると思へば何でもないのだ
それでいいのだ
そこに此(こ)の壮観がある
樹木をみろ
大木(たいぼく)を見ろ
このどつしりとしたところはどうだ『風は草木にささやいた』所収
文春文庫
『教科書でおぼえた名詩』(文藝春秋、2005)より