ブラート・オクジャワ「歩兵についての歌」[2022年06月06日(Mon)]
歩兵についての歌 ブラート・オクジャワ
宮澤俊一・訳
歩兵をゆるしてくれ、
あまりにも不合理であることを。
いつもぼくらは出かけて行く、
大地が春たけなわである時に。
一歩間違えば――
ぐらぐらの階段だもの、救いはない。
白い柳だけが、
白衣の看護婦のように、後ろ姿を見ている。
天気を信じないで、
長雨を降らせる天気を。
歩兵を信じないで、
元気な歌を歌う時は。
信じないで、信じないで、
庭々でナイチンゲールが鳴く時は……
死をも含めた人生に
まだ帳尻を合わせていないのだ。
時代がぼくたちに教えてくれた:
露営するが如く生きよ、ドアを開けたまま! と。
同士男性君、
やはり君の仕事は魅惑的だ:
君はいつも行軍していて、
夢を覚まさせるのはひとつだけ:
何だってぼくらは出て行くんだ
大地が春たけなわである時に?
CD「紙の兵隊」(OMCX-1034 オーマガトキ、1998年)より
*オクジャワ自身の歌唱では各連の終わり2行がそれぞれ繰り返されている。
◆不合理な命令にも従うほかない歩兵、それを見送る恋人や妻たちもまた、人生の帳尻合わせを果たせぬままの未来しかない――果たしてそれは「未来」と呼ぶに値するだろうか?
大地が春なら、人間のほうだって、その上にじっくり腰を下ろして、おのがじしの春を謳歌したいはずじゃないか?