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服部誕「場所から場所へ」[2022年05月18日(Wed)]


場所から場所へ  服部誕


世界はいつも地図の上にある
縮尺や地形記号が町角にあふれ
経緯線と等高線に囲まれた日々を
人々は暮らしている

地点から地点へ
位置から位置へ
方位から方位へと
少年は歩いてゆく

地表は固有名詞で埋めつくされている
山はただ山ではなく 川はただ川ではない
あらゆるものがすでに命名され
普通名詞は注意深く
斥けられている

少年は歩きつづける
歩きつかれ物陰に腰を下ろしても
そこはとうの昔に測量しつくされた世界
青と緑と茶色で印刷された紙の上
人目に付かない片隅に
印されている国土地理院のマーク

生まれたときから少年は名前をもたない
西へ東へ いくたびも国境線をまたぎ
南へ北へ いくたびも赤道を越え
ただ場所から場所へと歩いてゆく
人々は見えないものを見るように少年を見る

名付けられてしまったすべての場所に
風が吹き霧が立ち
少年を世界から遠ざける
通りすぎてゆく少年
永遠に歩きつづけるもの

さようなら世界よ
すべてのものの名が
忘れられてしまう日が来るまで
今日も少年は歩いてゆく



服部誕『息の重さあるいはコトバ五態』(書肆山田、2021年)より


◆名付けることは、未知を既知にすることだが、そのことの害毒というものもある。
名前が付いているものは、性質や仕組みが既に分かっているものだから、今さら取りあげる必要はないもの、として放って置かれる結果になる。

名付けた上で、かけがえのない存在としてとことん付き合ってくれれば良いのに、もう了解したのだから気にかける必要はない、と無視することさえある。
(子どもたちへの虐待はその一例だろう。)

◆地図に記された「場所」についても同様だろうか。
測量されて名を与えられ、了解されたものとして片付けられてゆく。
ただの山でなく「〇△山」として地図上に定着されたもの=世界に存在を承認されたもの=誰からも了解されているもの。

◆だが、果たして本当にそうなのか?
了解されて終わり⇒人間の利便のために開発しようが、回復不能なほどに破壊しようが構わないものとして扱うこと。

であるなら、名付けることは、大事なもの、本質的なものから人間を遠ざけてしまうことになる。
黒々とした未知の闇も、注意深く凝らした目を射抜く閃光も消滅し、ハナから存在しないものになってしまう。

そうでないほんとうの「世界」を「少年」は探して歩きつづけているのだ。




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