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詩人キム・ジハ(金芝河)逝く[2022年05月10日(Tue)]

◆韓国の詩人、キム・ジハ(金芝河)が5月8日、亡くなった。享年81。
1960〜70年代、朴正煕強権政治に抗して反政府運動を続け、繰り返し逮捕・投獄をされた。
サルトル・大江健三郎ら、世界の知識人による釈放要求運動が湧き起こった。
自由と民主主義を求める韓国民衆運動の旗印として、日本でも最も良く知られた人物だったと言って良い。

***


訣別  キム・ジハ(金芝河)
       姜舜 訳

さようなら、さようなら
銀色にかがやく低い丘陵に蹤(つ)いて
ゆらぐ森の影、踊る花たちに樅いて
遠のく都市よ
血みどろなわが青春を埋めてきた都市
さようなら
低く傾いたバラック建て
崩れおちた垣根に
風は果てしなく吹き抜け
黄土に裂かれた陽射しが叫びをあげる
なにをもっても砕きようのない沈黙が
みちみちたあの叫びを圧しつぶし
胸にはかすかにくすぶる慟哭
すりきれた作業服のちぢくれた肉体のなかに燃える
この久しい慟哭
とめようのない慟哭
忘却も死も消せないこの悲しみの青白い炎
一日とて酒なしには眠れず
一日とてたたかいなしには生きられなかった
生は恥、そして侮蔑、死ぬこともできなかったおれ
跡形もなく焼きつくし、旅立つ大陸すらなかった
叫び、また叫び
踏みにじられ、また踏みにじられ
しまいに残った一握りの
青春の誇りさえずたずたに引き裂かれ
阿片をうたれたまま
おもい烙印の下、やがて眠りに落ちた
眼の光さえひよわな羊の群に変り
うなだれて
おのれ見窄(みすぼ)らしい影に別れを告げ
見渡せば、いまはむしろ見知らぬところ
村と森と、赤茶けた大地に涙ながら口付けする
身を投げうち戦うべき大地の、明日の
あのあらわな苦しみを抱きしめる
たけり狂う反逆の胸にひたひたと打ち寄せる故里よ
むせかえる土の香りよ、胸にあふれる
いとしい人たちよ、ああ、名だたる瘠薄の地に
自若として踏みとどまる
いまこそ、かれらの前に脆(ひざまず)
ふたたび血みどろな長い歳月を
固くかたく抱きしめよう、さようなら
丈高い白楊の下を駆ける一筋の
まぶしい黄土のみちに沿い、ざわめく森影に沿って
遠のく都市よ
さようなら、さようなら。



小海永二[編]『世界の名詩』(大和書房、新装版1988年)より


***

【参考記事 2021/12/25】
金芝河「燃えつのる喉の渇きでもって」
https://blog.canpan.info/poepoesongs/archive/2175



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