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ウンベルト・サバ「停車場」[2022年05月08日(Sun)]


停車場  ウンベルト・サバ
          須賀敦子 訳

おまえは憶えているか夜の停車場を、もう
お別れですね、そして圧し殺した涙があふれ、
出発の列車が混みあっていた光景を。
ずっとむこうで、だれかが喇叭で吹いていた
進めの節、
おまえの心は、おまえの心は凍りついて。



須賀敦子『ウンベルト・サバ詩集』(みすず書房、1998年)より


◆サバ(1883-1957)の『大戦のときに書いた詩』の一篇。
兵を見送る停車場で聞こえた進軍ラッパは、送る者にも送られる者にも、審判を下す響きのように聞こえたことだろう。

◆その第一次大戦から百年以上も隔てて、今また戦争は幾組もの男女や家族を無惨に引き裂く。

生々しい映像が世界中に伝わる。見る者の心理的負担を考慮して相当セレクトされた映像だけでも、呑み下すことの出来ない気分が胃の奥からこみ上げる。

春を迎えたはずなのに瓦礫の中で凍りついた表情の人々を、カメラは映し出すが、その間にも、サイレンの音は聞こえている。





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