
飯島耕一「他人の空」+横井庄一さん[2022年01月24日(Mon)]
◆24日、神奈川県のコロナ新規感染者は5,276人。藤沢市だけでも137人に上った。
昨日の県内は3,794人だったから、わずか一日で1.4倍の増え方である(昨日の藤沢市は175人)。
病床も逼迫している。全国いたるところ同様の状況。
第5波以降の比較的鎮静化していたあいだに打つべき策があったはず、国力衰退期の世はこんなものかと、歯がみせずにいられない。
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他人の空 飯島耕一
鳥たちが帰って来た。
地の黒い割れ目をついばんだ。
見慣れない屋根の上を
上ったり下ったりした。
それは途方に暮れているように見えた。
空は石を食ったように頭をかかえている。
物思いにふけっている。
もう流れ出すこともなかったので、
血は空に
他人のようにめぐっている。
『現代の詩人10 飯島耕一』(中央公論社、1983年)より
◆戦争か大きな災厄によって廃墟と化した街。
空焼けの色が、疼痛を感じさせることはあるにしても、もう実際に血を流すことはない。
だが、空も街も人間たちもよそよそしい。
壊れてもとに戻らぬという事実は、大きな石のように呑み込めない。なのに、それをいつまでも味わい続けなければならぬこと、そうして、かつての自分は、もう存在しないことが判っている。
◆グアム島で横井庄一さんが「発見」されたのが50年前の今日、1月24日だという。
もうそんなに経つのか。
彼の「復員」を同世代の人々はどう眺めていたのだろう。先に帰ってきた自分たちにだんだん似てくると見ただろうか、それともむしろ自分たちとの違いが際立ってくるように見えたであろうか。