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太田奈江「革靴」[2021年12月27日(Mon)]

◆炊飯器のお釜を洗う時に、ご飯粒がくっついていたりすると小言がつい出る。
子どもがホッケや鮭の皮を残しても同様。「そんな育て方した覚えはない。鮭の皮はグローブや靴にもなるんだゾ。」とボヤいてしまう。
「この前もテレビで、秋田の農家だったか、鮭一匹、エラから内臓まで、みんなおかずに変身させて……」――言い終わらぬ先に席を立って消えてしまう。やれやれ、とボヤきの種は尽きない。
「ごちそうさま」と言って流しに食器を流しに置く。
――「あら」
家人が目でうながした我が茶碗に、ご飯粒がふたつみっつ……。

*******

◆昨日の芝居「雪やこんこん」の小屋主にして旅館の女将・佐藤和子は昭和元年の12月25日の生まれ、という設定だった。この昭和元年は1週間しかなかったことが芝居の中で説明され、「実の親子」らしさを補強するのだが、いや、改元にちなんで「和子」と名づけられた子どもはたくさんいるハズ、と「涙の母子再会」の真偽をめぐって生まれ年が取り沙汰される場面があった。

◆帰路、本屋で『赤とんぼ』という詩集に出会った。
読んでみようと思ったのは作者が1926年生まれとあったから。
劇中の「佐藤和子」とほぼ同世代。戦時下、敗戦、そして戦後の混乱と激動、平和の意味を直接知るお一人である。



革靴   太田奈江


突然の雨はボクの革靴をおそった

革靴がぐぐっと縮んで
するめいかに化けたのだよ

ええっ? どこのくにの笑い話ですか

いやいや 七十年も前 この国が敗れた戦後のこと
追い詰められた人々の心はもちろん すべてが究極に貧しかった時代の話 薄明りのマーケットで良く出来た革靴を売っていた

たまたま出会ったその見事さに
欺されたんだよ ボクは

雨のなか じとじとと 体を登ってくる不快さに足を止め ぼくはおかしくてわらってしまったのだよ 好意的にね するめいかで見事な靴を売っていたあの青年のせいではないとわかっていたから……

靴代が飛んだ自嘲と
腕のいいあの若もの
弟くらいだったかな あの青年が王道を歩める日があるのだろうかと やり場のない泣きわらいだったね

茜色の夕景が走る車窓を背の座席には 三人の若者
満ち足りた 現時代の新入社員でしょうか
真新しいスーツ姿に
当然 足もとは本物の革靴です

彼の回顧のまなざしが
そこで停まっていました


太田奈江(なえ)詩集『赤とんぼ』(土曜美術社出版販売、2020年)より

◆いかにも本物らしく見せたイカ製の革靴をつかまされたというはなし。
今また、若者がカモを探す時代ではあるけれど。




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