
キム・サンユン「すべてのものはその日を夢見て泣く」[2021年12月20日(Mon)]
◆『地球にステイ!』(クオン、2020年)から韓国の詩人の詩を――
すべてのものはその日を夢見て泣く
――COVID-19の日々
キム・サンユン
窓がある 外から地球を見ると胸ごとに窓がついている だから青く見える
胸に咲くピンク色の花 息と暖かさ水分とエネルギーを放つ 天国と地獄が入り交じるこの地 耐えるにはそんな花が咲かなければいけない 耐えながら窓の外の空を見上げる
いつも泣いている 月から眺めれば青く見えるのはそのせいだ すべてのものがその日を夢見て 岩と動物 花と人が一緒に泣いている 泣くことで癒された生命として 生命であり続けるために 生と死がからみあっている今を 耐えようと 地球は涙の防護服を着て 停止した時間の中 暗闇と闘っている
離散家族になってふた月めだけど 夕暮れ時の上弦の月 きらきらする明星は相変わらずだな 今日は窓を大きくあけて食事をする 泣きながら壁の向こうを夢見ているから 落ち着いて そして大胆に*
[原註]*落ち着いてそして大胆に 韓国の疾病管理本部公式サイト「コロナ19 今日のひとこと」(2020年4月)から引用した一節。
[翻訳・吉川凪]
◆平日のショッピング・モールで書店に寄り、詩のコーナーを探すと、詩集と言えるのは数点のみ。俳句や短歌の本の方がまだ多い。
文芸にほとんど関心が無い店の選書方針は、この国のふつうの人の関心のありよう、日々必要とするものを一定程度反映しているのだろう。
◆そんなことを思いながら上のような詩を読むと、韓国では違うんだろうな、と思われてくる。
「花」「涙」「窓」「空」「月」……どれも地球の上の詩と名づけられるものに登場することばばかりだ。しかし、それらに寄せる思いの深さ、感情の振幅の大きさは、「花鳥風月」を箱庭のような世界で味わえば十分と思うことに慣れたこの島国の民族とはずいぶん違う気がする。
言ってみれば、生きるために詩を必要とするか、そうでないか。