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大崎清夏「必要な店」―『地球にステイ!』より[2021年12月18日(Sat)]

◆コロナ禍をテーマにと、世界各国の詩人たちに呼びかけて成ったアンソロジーがある。
『地球にステイ!』と題するその詩集から――


            さやか
必要な店  大崎清夏


必要な店が立ち退いたあと
私たちはしばらく呆気にとられていた
自分の無力にほとほと落ちこみ
それから感謝と追悼を述べ
まだお金で買えるものと
お金で手に入らなくなったものを数えた

必要な店が立ち退いたあと
空き店舗の前を私たちは早足で行き過ぎた
栄養が足りなくて
私たちはいらいらした
私たちは政治の無能を罵った
私たちはミモザの咲いたのを見逃した
私たちはセキレイの飛来に無頓着になった
必要だった店を不要としていた者を見つけて責め
何か殴るのによさそうな不要なものを手近に探した

だけどもそれは長くは続かなかった
私たちには圧倒的に栄養が不足していた
私たちには死が迫っていた
私たちは必死になった
必死に抗議し
必死に応援し
栄養を必死に補い
栄養源を死ぬ気で育てた

挙げ句の果てに私たちは空き店舗を借りた
そして育てた栄養源を売る店を開いた

誰が必要としているかはわからなかったが
私たちの一命をとりとめた栄養源だった
その頃には扉や窓は禁じられていて
店には扉も窓も存在しなかった
目印に私たちは外壁を黄色に塗った

以前の店とはあまり似ていなかったが
私たちは自信をもって商売をはじめた
私たちに必要な店は
きっとあなたにも必要だと思ったから


四元康祐[編]『多国籍アンソロジー詩集 地球にステイ』(クオン、2020年)より


◆パンデミックが我々から奪った栄養源はまず食糧(報じられぬ人々の方が多いが)。しかしそれだけではない。
本や音楽、家族や友との語らい、それらも手が届かぬものになって身も心も痩せ細り、にんげんを死の淵へと追いやる。


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