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橋のこと[2021年11月14日(Sun)]


◆吉野弘の詩ではないが、生き死にに関して人は、いつも受け身で向かわせられる。

皇帝ダリアが丈高く咲く今頃は、喪中の挨拶が届く季節でもある。
その中に、M君の奥様からの葉書があった。
M君が今年の4月亡くなったのだった。享年68。こちらと同じく一浪して大学生となったのだから、同い年である。

大学1年生の夏を泊まりがけのバイトで一緒に汗を流した。
大船駅でアイスコーヒー販売の仕事だった。
荻窪あたりにあった会社に一緒に面接に行き、夏休みの始まる日に大船駅に二人で降り立った。
ホームにあるコーヒースタンド、そこのアイスコーヒーを列車の旅行客相手に売るのである。
駅からだいぶ離れたアパートが宿泊場所だった。高校生を含め10人ほどが集まっていた。

あいにくこちらは1週間ほどで仕事から離脱した。別のホームに入ってきた臨時列車に向かって階段を駆け下りた際に足を挫いてしまったためである。包帯を巻いた姿で帰郷する羽目になった。

M君はひと月ほどを完遂し、こちらのバイト代の残りがあったのを代わりに受け取って書き留めで送ってくれた。

休み明け、彼は念願のフォークギターを手に入れたようだった。それを手にカントリー&ウェスタンのサークルの演奏会で歌ったはずだが、それは聞き洩らした。
だが、クラスコンパで歌ってくれた「ジャンバラヤ」は今も耳に残っている。良く響くバリトンで高音もきれいに出すことができた。

小さい頃に父親に先立たれたこと、その親父さんは橋梁工事を手がけ、九州への大橋を架けた人だ、と人づてに聞いたことがある。以来、彼の賀状をもらうたびに、大きな弧を描いてせり上がる橋と眼下の海、足早に飛ぶ雲と青い空が目の前にひろがるように感じるのが常だった。

10年余り前に列車で九州に家族旅行をした時、実際にその橋を渡りながら、往復とも、M君のことを思い浮かべていた。

卒業してから会う機会はなかったから、記憶の中のM君は黒縁眼鏡ごしに丸い目を輝かせたニキビ顔で、ジーパン姿のままだ。


***


橋   まど・みちお


川は空を見あげて 流れています
空はひろいなあ と思って流れています
川は空を流れたくて 流れています

橋を渡るときに わたしたちの体が
なんとなく
すきとおってくるような気がするのは
きっと わたしたちが
川の憧れの中を 通るからでしょうね

そして 川の憧れの中には
昔の人たちの憧れも
まじっているからでしょうね

川のあちらがわへ 渡りたいなあ
どうしても 渡りたいなあ と考えて
とうとう橋をかけてしまった
昔の人たちの憧れも



小池昌代・編著『恋愛詩集』(NHK出版新書、2016年)より



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