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日下新介「母校にて」[2021年11月12日(Fri)]

◆日の傾くのが早くなった。橋を渡った横浜市側の道を小学生たちが帰ってゆく。
一番近い小学校が廃止になり、遠くの学校まで2キロ近くを通うことになった彼らのランドセル、影が長くなった分、重たげに見える。


母校にて   日下新介


なぜ ここへと
自問しても確かな言葉としてはかえってこないが
ぼくは五十六年ぶりに母校の小学校を訪れた

木造の校舎は鉄筋コンクリートに変わっていて
廊下を歩くときの懐かしいきしみはないが
どこからか聞こえてくる
「少年兵に志願しない者は国賊だ」
子どもを死に追い込む
叱咤激励の声
その声の主は廊下に掲げられた歴代校長の写真の中にいた
戦陣訓の暗誦が出来ない者が
正座させられた奉安殿の跡には
昔のままの二宮尊徳の像が立っている

分列行進の号令をかけるのがいやだったぼくは
少年飛行学校では
真っ先に教官に敬礼の号令をかけていたのだ

なんという悔恨
死に場所なんか求めず
学問の道へと進んだ級友もいた時代に

その級友たちの四分の一は
すでに亡く
十代の終わりから二十代にかけて
幾人かは結核で斃れた

ぼくも結核になったが
幸いに生きながらえ
特攻にもならず
すでに古稀を越してしまった

校庭の松の古木は
由緒があるので切らないでいるのだと
若い女教師は言う
どのような由緒なのだろう

いま学校には「日の丸・君が代」が押しつけられる
砂埃の舞う校庭には
再び分列行進の足音と
「昔、憲法9条があった」
と回顧するような時代がくるのであろうか
そうであろうか

日曜日の校庭には草野球の若者たちの
明るい声がこだまして
母校の校庭に立つぼくの
はるかなる幻影を砕く

      (01・11・28)

『日下新介全詩集』(コールサック社、2014年)より



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