谷川俊太郎「難問」[2021年11月04日(Thu)]
難問 谷川俊太郎
揺り籠が揺れるのはいい
風に木々が揺れるのも
船が波に揺れるのも
風鈴が揺れるのも
だが地面が揺れるのを
どう受け容れればいいのか
と 詩は問う
難問だ
ぶらんこに揺られて考えたが
答がない
『詩に就いて』(思潮社、2015年)より
◆それは確かに難問だ。
抗うことのできるはずもなく、せいぜい肝をつぶすか、効かないと分かっていて、それでも祈るか。
受け容れることができないものと知りつつ、「問う」ことが「詩」だという。
なぐさめや、ごまかしでなく、つまり気休めやウソでなしに、のど元に突きつけられて逃れようのない事態に対して、言葉を突っ張り棒にして我が全存在を支えようとあがくこと――
(――と長々書かないで、ふたくち、みくちに一切を注ぎ込むこと)。