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日本国憲法公布75年=谷川俊太郎「庭」[2021年11月03日(Wed)]

◆憲法公布記念日だ。我が家に旗はない。
代わりに、ということではないが、朝、相棒のためのオシッコ・シートにほんのり赤い丸が出来ていた。
血尿である。初めてのことだ。
食欲まったくなく、水すら口にしない。それなのにしきりに廊下を行ったり来たりしている。ガマンしているのだ。
ただちに獣医さんのもとへ連れて行き、採尿や血液検査をしてもらった。
どうもボウコウに炎症が出来ているらしい。
夜には食欲を見せて血尿も収まりつつある。しばらく要観察だ。


◆◇◆◇◆◇◆



庭   谷川俊太郎



庭の下に
不発弾が埋まっているのを
幼い女の子は知るよしもない
それが青空から落ちてきたのは遠い昔
落とした敵はもうこの世にはいない
関東ローム層に埋もれた爆弾は
木の実のようには芽吹かない

   *

庭に小鳥が来ている
名前は知らない
図鑑で調べる気もない
いま落ち葉の上で一瞬じっとして
彼は(それとも彼女は)考えている
私が考えているのとは違うことを
その違いが残念だ

   *

春になるとタンポポが咲く
種子はどこから来たのか
黄色い花はすぐ白い綿毛に変わる
いつの間にか風に乗って
種子はどこかへ旅立つ
どこから来てどこへ行くのか
それを知らないのは私も同じだ

   *

枯葉が散り敷いた庭の
裸の木の下に一脚の椅子がある
見えない誰かが座っているかのようだ
もしかすると少年の私かもしれない
読み終えた物語の中の少女が弾く
チェンバロの音に魅せられて
彼は上の空で未来を夢見ている

   *

子どもは庭の片隅に穴を掘った
何かを埋めるためではなく
何かを隠すためでもなく
汗をかきかき掘り続け
しばらく自分の穴を楽しんで
それからそれを埋め戻した
誰にも何も言わずに

   *

「もういいかい」のこだまと
「まあだだよ」のこだまが
思い出の中でもつれ合っている
庭はヒトの歴史に追われながらも
自分自身の歴史を生きている
みみずとともに
霧雨や夕立とともに



『ミライノコドモ』(岩波書店、2013年)より


◆「不発弾」は「木の実のようには芽吹かない」という第一連の結び2行だけで十分なインパクトがある。
国の内外のおびただしい犠牲とひきかえに手にした日本国憲法に息を吹き込むことへの後押としてはこの連だけでも十分力があると思う。

だが、公布されて75年、軽々しく改憲を口にしたり、あるいは改憲への誘導を意図した教科書が出されたりしている世情を思えば、「庭」を定点として少年たちの歴史に想像力を向かわせるこの詩は、大きな示唆を含んでいると思える。

たとえば第五連の、庭に穴を掘り、また埋め戻すという行為。

防空壕としてではなく、自分がもぐりこむために、汗をかいて穴を掘り続ける行為は、「目的」に縛られない点で全く自らの意思によるものであり、それを可能にする平和があってこそ、その自由を満喫できるのだ、ということをいとも具体的かつ明瞭に理解させてくれる。



樋口一葉展寸感[2021年11月03日(Wed)]


◆神奈川県立近代文学館で開催中の樋口一葉展、違う布地3種類をつぎ合わせ、上に羽織を着れば、それと分からないように仕立てた着物があった(日本近代文学館蔵)。
形見の品というより、いまそこに、底知れぬ生(せい)の姿を示したなりで、一葉その人が立っているように圧倒される感じを覚えた。

 *『樋口一葉展 我が詩は人のいのちとなりぬべき』11月28日まで



*******

ある願い  清岡卓行

わたしは乾きたくない
山の上に浮く魚の化石のようには。
私は氷りたくない
凍土帯(ツンドラ)に埋もれたマンモスのようには。
私は潜みたくない
原始の住居の跡の穀物の粒のようには。
わたしは狂いたいのだ
海の底から噴きあがる焔のように。
わたしは泣きたいのだ
沙漠の中を動きまわる湖のように。
私は消えていきたいのだ
青空に羊雲を残す嵐のように。


『清岡卓行全詩集』(思潮社、1985年)より

◆たとい跡形もなく消えて、つかのまの空に浮かぶ雲に名残を見せるだけだとしても、中途半端でなく、自らをごまかすこともせずに烈しく生きたならばそれでよいではないか――。




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