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茨木のり子「木は旅が好き」[2021年10月24日(Sun)]


木は旅が好き  茨木のり子


木は
いつも
憶っている
旅立つ日のことを
ひとつところに根をおろし
身動きならず立ちながら

花をひらかせ 虫を誘い 風を誘い
結実をいそぎながら
そよいでいる
どこか遠くへ
どこか遠くへ

ようやく鳥が実を啄(ついば)
野の獣が実を齧(かじ)
リュックも旅行鞄もパスポートも要らないのだ
小鳥のお腹なんかを借りて
木はある日 ふいに旅立つ――空へ
ちゃっかり船に乗ったものもいる

ポトンと落ちた種子が
〈いいところだな 湖がみえる〉
しばらくここに滞在しよう
小さな苗木となって根をおろす
元の木がそうであったように
分身の木もまた夢みはじめる
旅立つ日のことを

幹に手をあてれば痛いほどにわかる
木がいかに旅好きか
放浪へのあこがれ
漂泊へのおもいに
いかに身を捩(よじ)っているのかが



詩集『椅りかからず』所収。『茨木のり子集 言の葉 3』(ちくま文庫、2010年)に拠った。


◆自分では動かない木の、放浪・漂泊へのあこがれを、このように表現されれば、自ら動けるはずの者たちの旅が、実は体を移動しただけに過ぎないかも、とひるがえって考えずにいられない。







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