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吉野弘「種子について」[2021年10月09日(Sat)]


種子について   吉野弘
  ――「時」の海を泳ぐ稚魚のようにすらりとした柿の種


人や鳥や獣たちが
柿の実を食べ、種を捨てる
――これは、おそらく「時」の計らい。

種子が、かりに
味も香りも良い果肉のようであったなら
貪欲な「現在」の舌を喜ばせ
果肉と共に食いつくされるだろう。
「時」は、それを避け
種子には好ましい味をつけなかった。

固い種子――
「現在」の評判や関心から無視され
それ故、流行に迎合する必要もなく
己を守り
「未来」への芽を
安全に内蔵している種子。

人間の歴史にも
同時代の味覚に合わない種子があって
明日をひっそり担っていることが多い。


小池昌代 編『吉野弘詩集(岩波文庫、2019年)より

◆「生命は」や「I was born」で知られる吉野弘にふさわしく、生命のリレーを主題にした一篇。
小さな種子に内蔵されたしくみの玄妙さ。こうして言葉で示されると読者は柿ひとつ口にするにも注意深くなる。
同時に思慮深くなれるかどうかは分からないけれど。

◆今年長寿を祝ってもらえることとなった我が相棒、ドッグ・フードにも肉にも食欲を示さないことが時々ある。困り果てて、試しに柿を小さくカットして口もとに運んだら、パクリとやった。意外な発見だった。
ネットで調べてみたら、食べ過ぎると水分過剰で下痢になったりする、とあった。種は与えぬよう獣医さんの注意もあったが、我が家で買ってくるのはだいたい種なしの柿だから、その心配はしなくてよい。
――それではせっかくの「時の計らい」に感じ入る機会もないわけだが、おかげで我が相棒は長命を謳歌しているのだろう。


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