八木幹夫「わるくち」[2021年10月05日(Tue)]
わるくち 八木幹夫
わるくちって
いいきもち
あいつがいないところで
こっそり
ねえねえねえ
あいつね
………
あっ きたきた
ないしょだよ
ぜったい
いっちぁだめだよ
わるくちって
いいきもち
だすものだしたあとみたい
わるくちいわないやつなんて
ふんづまりの
どんづまり
ひたいに
いくつもしわよせて
つまり その あの
おたんこなすの
べんぴしょう
わるくちって
いいきもち
あいつの
いない
とき と ばしょ
あいつが
しんでしまったら
わるくちって
いやなきもち
でもやっぱり
わるくちって
いいきもち
あいつもむこうで
いっている
ぼくの
わるくち
いっている
えんまさまに
いっている
どこまで
いやなやつなんだ
スットコドッコイ
オトトイコイ
現代詩文庫『八木幹夫詩集』(思潮社、2005年)より
◆「どこまで/いやなやつなんだ」と、たたいた「あいつ」への「わるくち」が、そのままこちらにも返ってくる。
それを承知で「わるくち」を言うのは、「評論家」や「専門家」を名乗る輩のおためごかしより数倍、精神衛生上、良い。世間にもたらす害悪も数等少ない。