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高野喜久雄「蟬」:曲 田三郎[2021年08月20日(Fri)]

◆夜の虫の声を聞きながら、今年の夏は蟬の声のうるささを意識したことがないことに気づいた。
雨の晴れ間を待ち焦がれていたように蟬が鳴き始めるのは何度かあったが、その鳴き方も控え目なものだった。

今年ばかりは蟬も、束の間の生を謳歌する、という気分になれずにいるのかもしれない。


*******

蟬  高野喜久雄


卵から孵(かえ)った蟬は
七年(ななとせ)を土の中
土にこもって その身体(からだ)
透きとおるほどに 土を聴く

耳をすませて地の底の
焰の音を聴きながら
やがて己を脱ぎ捨てる
残る七日の いのちのために

蟬は はげしく鳴いている
すべての耳の高さを超えて
すべての耳は土となれ
土の祈りを引き継げと
身をふるわせる蟬の声

耳廃(みみし)うほどの蟬しぐれ
結びつながれ 大いなる
一つの耳によみがえれと
鳴きつづけている蟬の声



田三郎の『混声合唱組曲 この地上』(音楽之友社、1981年)より。

◆作曲者の田三郎は、「坐禅を組んでいる蟬」と評されたことがあると記している。
なるほど「ミ」の基音で貫かれた曲は観想する僧たちの気韻が漂う。
混声合唱でなく男声合唱で聞けばその印象は一層深いだろう。






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