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天野忠「カメラ」[2021年05月21日(Fri)]

◆三百年も時計の針を戻したような発言にめまいがした。

――「道徳的にLGBTは認められない」
――「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」

昨日20日、LGBTなど性的少数者に対する理解増進に向けた法案の自民党における審査で、上のような声が大勢を占めたという。

★【TBSニュース】
「いろんな副作用も」LGBT理解増進法案 自民部会で紛糾 了承見送り
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4272640.htm?1621608459153

ニュース見出しの「副作用」論は山谷えり子参院議員のコメントだ。
次のように語ったという。

「女子の競技に男性の身体で、心が女性だからっていって競技参加して、いろいろメダル取ったり、そういう不条理なこともあるので少し慎重に。社会運動化・政治運動化されると、いろんな副作用もあるんじゃないでしょうか」

さすが、かつて性教育を過激だとしてバッシングの先頭に立った人物だけのことはある。
マスク越しに発せられるコメントはもはやモウソウの域に達していて、TVカメラのレンズを曇らせてしまうように見えた。

*******



カメラ  天野忠


超能力の精巧なカメラで写すと
歩いている人の靴下の中から
まるで煙のように
湧き上ってくるものが見える、という。
ひょろひょろと立ち上り
もやもやと揺れて
そして消えるものが見える。
あれは
嫌な足の臭い
その臭いが見えるのだという。
超能力の精巧なカメラで写すと
考えている人の頭からも
まるで煙のように
湧き上ってくるものが見える、という。
ひょろひょろと立ち上り
もやもやと揺れては消え
またひょろひょろと立ち上り
もやもやと揺れては消え……
あれは心の姿が写るのだ、という。

いい心だったか
悪い心だったか
それは分らない。


『詩集 私有地』(編集工房ノア、1981年)より




ムシたち[2021年05月21日(Fri)]

◆久しぶりに、といっても二カ月ぶりくらいだが、ゴキブリの年端もいかないのに出会った。
この前に見かけたのは我が家ではなく、遺品の片付けに日参していた貸間で、廃棄物の荷造りも終えて最後に畳を起こした時だ。
まだ三月なかばだというのに、ずいぶん立派な成虫がゾロゾロ姿を現し、掃討作戦を余儀なくされた。

◆持ち帰って未整理の荷物が軒先などに未だ積んだままなので、身を潜めていた卵から繁殖し始めた可能性はある。親の敵とばかり寝首をかかれても不名誉である。

生き残った人間にはいろいろやるべきことが多い。
何とかせねば。

*****


考えごと――PROLOGUE   天野忠


ねながら
人生について考えていたら
額に
蠅がとまった。

長いこと休んでいて
それから
パッと
元気よく飛び立った。

どうやら考えがまとまったらしい。

俺はまだだ。



『長い夜の牧歌(老いについての50片)』(書肆山田、1987年)より


◆「一寸の虫にも……」と虫を虫ケラとしか見ない人間は自分の思い上がりに無自覚だが、虫たちから見れば人間はどう見えているのだろう?
「五尺余りの身を持て余し、己独りじゃ飛べもしない」と虚仮(こけ)にしているのだろうか?




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