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二兎社『ザ・空気ver.3』[2021年01月13日(Wed)]

210113ザ・空気ver.3入口ポスターDSC_0068_A.jpg
池袋の東京芸術劇場、シアターイースト入口の『ザ・空気ver.3』ポスター
東京は1/31まで。その後、各地を巡演。


二兎社『ザ・空気ver.3』(作・演出:永井愛)を観た。

2017年の「ザ・空気」、2018年の「ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ」、どれも政治と社会の現在地を可笑しくかつ真摯に描き出して面白かったが、今回が最も仮借なく政治と報道の現状にレッドカードを突きつけたように思う。

今回登場する政治ジャーナリスト・横松(佐藤B作)は、第一作で自殺したニュース・アンカーとして名前が登場する桜木をかつて育て、桜木が範として尊敬する先輩であった、という設定。

◆コロナ禍、学術会議任命拒否問題と、政府による報道番組のチェックなど、只今進行中の事態を取りあげているので、「お答えは差し控える」「人事のことなのでコメントできない」等、メディアが繰り返し伝えた権力者のセリフが引用されて、そのつど観客の笑いを誘う。

フト思うのは、「ザ・空気」シリーズの4年間、現実の政治も報道のありようも全く望ましい方向に進んで来なかったことだ。暗澹とせざるを得ない。
こんなんで良い言いはずがない、と多くの人が感じてきたであろうに、総理や閣僚の、ほとんどマンガのような言い分を耳にすることのみ久しく続いて、われわれ自身は麻痺か中毒症状に陥っていないだろうか?

◆事実を伝えるはずのメディアの現場が実際には作為や演出にまみれていることを、フィクションである演劇が舞台上に照らし出して見せる。
その中心となっているのは死んだ桜木であるのだが、実際には登場しない人物の存在が物語を動かし、登場人物たち五人をそれぞれに変容させていく。
その点に評論家・加藤典洋の次の詩を思い合わせずにいられなかった。

***


たんぽぽ  加藤典洋


うん
たんぽぽ

私たちはみな
死んでいる
生きているというのは
間違いなのだ
私たちは
みな
死んだ人の
夢なのだから

そう
たんぽぽ

死んだ人が死ななかったら
私たちはいなかった
私たちと死んだ人たちのあいだには
超えることのできない壁と
秘密の回廊がある

その秘密の回廊は
誰の中にもある
そこで
死んだ人と生きている人が
出会う

ふたりは
それと気づかないまま
すれ違う
同じ人なのに
気づかない
信号の色が変わるのに
気を取られている
彼らはすれちがう
彼らは気づかない
信号の色が変わると
秘密の回廊は消える

ときおり
たまらないようにして
私のなかからもうひとりの私が
私を脱ぎ捨て
どんどんと先に走っていく
そんなとき
秘密の回廊のドアは
ばたんと締まる

残された私は
死んでいるのか
生きているのか

顔のところだけワタゲになって
風に揺られている

ねえ
たんぽぽ

私たちはみな
死んでいた
生きていると思っていたのが
間違いだったよ

私たちは
みな
あの人の


死んだ人が死ななかったら
いなかった

あの人たちの
夢なのだ

さあ
たんぽぽ

飛びなさい
       2018/12/4


『僕の一〇〇〇と一つの夜』(私家版、2019年)所収
『現代詩手帖』(2020年9月号)〈現代詩アンソロジー2010-2019〉によった。

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