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高野喜久雄+田三郎『水のいのち』より「川」[2021年01月09日(Sat)]

◆前回に続き田三郎の合唱組曲『水のいのち』第4曲「川」についても、原詩()と組曲への改作()とを並べてみる。




川   高野喜久雄

なぜ さかのぼれないか
なぜ 低い方へ行くほかはないか
今日も
川はその河底をえぐり
その岸辺をけずる
川は 川でなくなることを願う
この情熱の 不条理はいつも美しい

しかし
もっと美しいのは その隠された苦しみだ
(ひ)き割ろうとして ついに
右と左に お前が鋸き割れなかったものは何か
「それは 大地でさえなかった!」
いつでも
わたしはそれを考えている
考えながら
同じく苦しい者として お前をよこぎる
お前が流れをくだるとき
必死に写した 空を見る
雲を見る 鳥を見る
お前が流れをくだるとき
必死に育てた 渦を見る
淵を見る 魚を見る
その空が 何であれ
その魚が 何であれ
お前の問われているものを
わたしは わたしの挫折の中でになう
わたしの 胸の岩の中でになう


【思潮社現代詩文庫『高野喜久雄詩集』p.37によった。】






川   高野喜久雄


 何故 さかのぼれないか
 何故 低い方へ行くほかはないか

淀む淵 くるめく渦のいらだち
まこと 川は山にこがれ
きりたつ峰にこがれるいのち
空の高みにこがれるいのち

山にこがれて 石をみごもり
空にこがれて 魚をみごもる
さからう石は 山の形
さかのぼる魚は 空を耐える

だが やはり 下へ下へと
ゆくほかはない 川の流れ

おお川は何か
川は何かと問うことを止めよ
わたしたちもまた
同じ石を 同じ魚を みごもるもの
川のこがれを こがれ生きるもの


【松井慶太・指揮/東京混声合唱団『水のいのち』(フォンテック,2011年)ライナーノートより 】

◆冒頭の2行を除いて、全面的改稿と言ってよい。
原詩に色濃い「わたし」の川への感情移入は、濾過されたように消え去った。
人の思い入れという観念を水に溶かすように消し去って得たものは、川が川として生きている姿。

それは「こがれる」という言葉を川の淵、渦巻く水の中から浮上させたことで可能になった。
さらに「こがれ」の先に「みごもる」ことを持って来た。
原詩にはない二つの動詞を、「川のいのち」の具体的な表現として据え、物語を生むことで、冒頭2行の根本的な問いへの答えが導かれた。

合唱の歌詞としてはこの2行を一字下げてある。
序奏に続いて1行目の問いがユニゾンで歌い放たれる(スッパリと切断される)。
ついで2行目は沈思の合唱となる。
問いが実は「わたしたち」自身に向けられており、これに応えよと求めているのだ。

*ネット上では中学生から大人たち、プロ・アマ問わずさまざまな団体が『水のいのち』を歌っている。中にはオーケストラ伴奏のものまである。
聴き比べるにつけ、生でとっぷり聴いてみたいと思わせる。
歌ったことがある人は幸いなるかな。



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