
「軍事産業の社会的パートナーたち」[2020年10月24日(Sat)]
◆エンツェンスベルガーの詩をもう一篇。
学術会議に圧力を加える理由の一つが軍事研究に学者たちを動員することだとされる2020年の日本にも当てはまりそうな憤怒と諷刺のことば。
軍事産業の社会的(ソーシャル)パートナーたち
エンツェンスベルガー
飯吉光夫・訳
歯ぎしりしたいほどの光景だ、高級ホテルの
テラスの上の脂肪ぶとりのいのししどもは、
口腹をこやすことや泥棒行為からゴルフ場で休養をとっている
神のめぐしごどもは。
ますますもって
たえがたい存在になる君、旋盤工よ、
小市民よ、廷吏よ、試補よ、見習いよ、
君のますます悲しげになる黄いろい顔――
さんざんに鼻づらを引きずりまわされている、
自堕落な、無気力な風の一陣、
みずからの手錠の鍛冶屋、
みずからの死の助産人、
君自身に盛られるだろう毒菓子の
製造人
もちろん
あまたの者らが君に殺人の廃止を約束する。
君に慫慂(しょうよう)する、だが殺人者たちは
殺人とたたかうため戦地におもむくことを。
非人道的行為が敗れることは
ない――敗れるのは君――非人道的行為は
化粧壜の顔料の色をとりかえるだけ――
犠牲者たちの血はいつまでも黒い。
川村二郎/種村季弘/飯吉光夫 訳『エンツェンスベルガー全詩集』(人文書院、1971年)より。
*収録詩集は1957年刊の『狼たちの弁護』。