
カンカラ三線・演歌師 岡大介「湘南社」を歌う(2)[2020年10月21日(Wed)]
◆雨岳文庫民権の会の岩崎稔さんが10月31日の民権講座・岡大介公演に寄せた文章を拝読した。
今回初演される「湘南社ソング」を作詞された生みの親である。
これをメロディに乗せて歌う岡大介さんがもう一人の生みの親となる。
私たち市民は、これを口ずさんで21世紀に大きく育くむ育ての親ということになる。
初演に先だって「湘南社ソング」の歌詞を収めた全文を紹介する。
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カンカラ三線・演歌師岡大介「湘南社」を歌う
雨岳文庫民権の会 岩崎 稔
2020年10月31日(土)伊勢原の公益財団法人雨岳文庫(山口家住宅 国登録有形文化財)において、第6回「湘南社」民権講座「カンカラ三線・演歌師岡大介“現代の自由民権を歌う”という、これまでの民権講座とは趣が異なる公演が開催されることになった。そこで歌われる「湘南社ソング」を本紙面にて紹介しようと思う。湘南社とは、相州の最初で最大の民権結社で、その講学会で行われた「憲法論議」は「湘南社の主権論」として、高く評価されている。その主権論は、憲法草案には至らなかったが、人民主権論を徹底させた憲法論議で、多くの憲法草案が「君民二元論」をとっているなかで、堂々と「人民主権一元論」を展開している点で注目される。『神奈川県史』は、その意義を「五日市憲法をも超えるもの」と評している。それらの憲法論議の内容を是非、伝えたいと思い、カンカラ三線・岡大介公演での「湘南社」ソング公演の開催となった訳である。自由民権運動は、現在の民主主義を考える上での原点と考えたからに他ならない。

岡大介(おかたいすけ)さん
「湘南社」ソングは二つ用意したが、今回、歌われるものは、憲法視点から近現代史を歌ったもので、日本国憲法には自由民権運動の遺産が受け継がれているという点を強調し、主権在民と人権擁護規定が、敗戦後に制定された日本国憲法で復権された点を強調するものであった。岡大介さんは自由民権運動から始まった明治大正演歌をうたう現代唯一のカンカラ三線・演歌師、特に演歌師、添田唖蝉坊・知道親子の作品をうたっていることで知られている。添田唖蝉坊の流れをくむ岡さんの演歌は、唖蝉坊のように、時代が孕む世相に鋭く入り込み、笑い飛ばす力をもつ。今回、「湘南社」民権講座で、岡大介さんをお呼びして「公演」を依頼した訳が、そこにあった。岡さんがいう「演歌」とは、明治時代から脈々と続いてきた『演説歌』の意、庶民の不満や怒りがこもっている本来の演歌と言われるものである。今回、公開講座で歌われる「湘南社」ソングは以下の通りである。
1 自由は大山の麓より
民権魂 ここにあり
雨岳文庫で 目をさませ
ワレラガ湘南社シットクレ
2 自由は大山の麓より
君主主権 道理なし
国民主権こそ 正義(正理)
ワレラガ湘南社シットクレ
3 自由は大山の麓より
国民主権 奪われて
戦争惨禍 耐え抜いた
ワレラガ湘南社シットクレ
4 自由は大山の麓より
繰り返しはせぬ 戦争を
決意を込めて 憲法に
ワレラガ湘南社シットクレ
5 自由は大山の麓より
主権在民 わが宝
未来へつなぐ 心意気
ワレラガ湘南社シットクレ

山口左七郎旧居(現山口家)にある民権碑
次のもう一つの「湘南社」ソングは、今回は歌われないが、湘南社の主権論を主題にしたもので、猪俣道之輔「主権の帰属」と宮田寅治「主権は何に帰属するや」との講学会レポートを要約した「演説歌」である。
湘南社の憲法論議
〜宮田寅治と猪俣道之輔の主権論〜
憲法は国家の基本を規定する
主権在民こそ 正理
国民は主権の権力をもつ
主宰者だから
総領・帝王を置くか否かは
主権者の命ずるところ
137年も前のことだけど
宮田寅治は 述べている
まるで 日本国憲法第一章と同じだ
主権在民あればこそ
国の平和が 保たれる
君主の横暴押さえなければ
人民主権は 成り立たぬ
国の平和を望むなら
主権は人民に帰せられるべき
137年も前のことだけど
猪俣道之輔は 述べている
まるで 日本国憲法前文と同じだ
(「湘南社ソング」A歌詞原案)
カンカラ三線・演歌師岡大介さんが湘南社ソングを「是非、全国に広めたい」と言われる。これは現在にも引き継がれている自由民権の精神を全国に広めていこうという思いの現れで、われわれに、大きな励ましと勇気を与えるものであった。ここに岡さんの作曲への労を謝し、お礼としたい。
(東京唯物論研究会会報『燈をともせ』第31号寄稿)