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[2020年10月09日(Fri)]

DSCN4392-Aウラナミシジミ.jpg

初め、大ぶりのチョウがとまっているように見えたが、実は、つがうウラナミシジミなのだった。

*******


蝶  田中清光


翻える木の葉よりもひらひらと
天上の風の道を滑走してゆく蝶をみたものは
その脆そうな全身の器官 魅惑的な二枚の翅の色彩模様
たちまち視界から消えてゆく羽撃きの危うさに心をふるわせる

蝶と名づけられた生物の おそるべき種族の多さの
全種類を確かめることなど誰にもできやしないが
萬をこえる種類といわれる蝶の世界が
ささやかに花の蜜や樹液を吸うばかりで
生命をやしなっているという自然の
不思議なやりとり 微妙な支え合いよ

蝶はその短い命を 人間が愚かな戦争をくりかえす長い時代の
なかでもつなげてきた
季節から季節へ 産卵から羽化への道すじを
海上であろうと 地上であろうとためらうこともなく移動もして

海を越えて翔ぶ蝶が千キロ以上も花を求め命がけの旅に出るのは
子孫を残すためのひたすらな本能か
上昇気流や風に助けられ 地球の動きの循環に添いながら

余計な欲望や事件には見向きもせず
生命の流れをひとすじに飛びきって
毛羽ほどに多岐に分かれた昆虫の系譜の筋道のなかで
現在を生きている

蝶の飛ぶ姿を もはや光の喩として見わたし……
生命が運ばれつづける脆くも魅惑に満ちた
出現とはかない上昇 その成就に味方するのは
どこに棲む髪だろうか



*第5連下線をひいた「現在」、原詩は傍点。

田中清光『言葉から根源へ』 (思潮社、2015年)より


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