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〈おらびながら〉[2020年10月08日(Thu)]


方舟  大岡信

空を渡れ 錨をあげる星座の船団
灯火は地球に絶えた 悲愁は冷たく迅やかだ
湖水の風に羽を洗う鳥たちはむなしく探す
昨日の空にはためいていた見えない河原を

ひとよ 窓をあけて空を仰ごう
今宵ぼくらはさかさまになって空を歩こう
秘められた空 夜の海は鏡のように光るだろう
まこと水に映る森影は 森よりも美しいゆえ

夜の奥に胸を開いて歩み入れば
地球を彩る血の帯ははためくだろう
憎悪の暗い洞穴をゆさぶりながら
夜のしじまにしたたりながら おらびながら

この星がふるさとであるか 血は血を泛(うか)
この星がふるさとであるか 川は涸れ……
鳩たちが明るい林を去ってからすでに久しい
愛するものよ お前の手さえ失いがちに



*『大岡信著作集』(青土社、1977年)によった。

◆大岡信(1931-2017)の初期詩篇の一つ。
これを含む4篇の詩に木下牧子が曲を付けた混声合唱組曲『方舟』(1980年)がある。他の詩は「水底吹笛」「木馬」「夏のおもひに」で、いずれもみずみずしさをたたえた合唱曲として多くの合唱団によって歌われている。

◆上記著作集に「水底吹笛」として収めた初期詩篇は、日付けの付された詩篇から推定して、十代半ばから二十歳ごろまでの作品をおおむね成立順に収めたと思われる。
合唱曲としての「方舟」も、高校の合唱コンクールで取り上げられているように、若々しい背骨が通った、まっすぐ前を見つめる曲になっている。20代初めの作曲者が大岡信の美しい日本語に出会い、歌曲ではなく合唱曲としたのは自然なことだったろう。

◆さて、表裏や下心のない言葉にとんと出会わない昨今、こうした詩や歌が果たして可能だろうか、と思わずにいられない。

******

★木下牧子作曲の合唱組曲では冒頭「空を渡れ 錨をあげる星座の船団」をリフレインとし、曲の最後にも繰り返している。

◆YouTubeにアップされた合唱の中から一つ――

「遊声」第10回記念演奏会(2007年6月30日)指揮:鈴木成夫、ピアノ:山内知子
https://www.youtube.com/watch?v=XJmHHJgrx0I&list=PL7U6RpUs8D9iAYXljWfHQmO9YIB2Zs4Fw&index=4





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