• もっと見る
« 2020年07月 | Main | 2020年09月 »
<< 2020年08月 >>
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
〈要求であるものが怒りにかわるとき〉[2020年08月16日(Sun)]

DSCN4181ミソハギ?.JPG
ミソハギ(禊萩)という花だろうか。田んぼのへりに7月ころからお盆の今頃までずいぶん長く咲いている。
西の方、岡山あたりではボニバナ(盆花)という名もあるそうだ。お盆を「ボニ」と記すのは古典にもあるが、柔らかいひびきが鼻を抜け耳たぼをくすぐる感じがある。

*****


真鍮の柱    石原吉郎

あの夕焼けをくずしておとせ
あつい豆腐をくずすように
つきくずしておとせ
かがやく真鍮の柱がのこるまで
要求であるものが
怒りにかわるとき
どのような保証も
怒りに与えるな
すでに怒りであったものを
かぼそい煙突におきかえるな
すなわちそのように
生きたものを
夕焼けの朱へ立たせておけ
かがやく真鍮の
柱がのこるまで



現代詩文庫『石原吉郎詩集』(思潮社、1969年)より

◆烈しい詩だ。
「要求」が容れられることなく「怒りにかわる」とき、それにどんな見場の良い「保証」を与えたところで、紙切れほども役にたたない。
(「黒い雨」訴訟を控訴させた国が、同じ舌で、被爆対象地を広げることも検討する、などと、おためごかしを口走った、つい最近の事件を連想してしまう。)

◆「かぼそい煙突」とは、多くの人々を荼毘に付すには細すぎる煙突だ、という意味だろう。
怒りの主たちは生きているからこそ、怒りそのものとしてここにひしめいて居るというのに。

怒りは夕焼けを崩落させ、その朱を浴びながら自らを燃やして輝く。
そして怒りは――黄金ほど世俗の価値は持たないにしても――しっかと世を支える堅固な柱として遺る。いわば不磨のモニュメントとして未来を支え続けて行くのだ。

多くの人柱の上に戦後75年があることを思うなら、求めるべきことを(例えば「国会を開け」と)求めるべき相手に突きつけ、相手があくまで受け容れないと言うのであれば、生きている私たちは怒りと化して立ち上がらねばならない。


| 次へ
検索
検索語句
最新コメント
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml