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「遠島」[2020年06月04日(Thu)]

DSCN3612.JPG
田んぼを潤してゆく水路わきのビワが熟して鮮やかな黄色に。

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◆およそ2ヶ月ぶりにショッピングセンターに出かけた。
衣料品フロアの目に付くところに、東京オリンピックのシンボルマークをプリントしたTシャツが並んでいたが、足を止める人はいない。公言する人は未だ少数だろうが、「無理だろうな」と思っている人の方が大半ではないか。世論調査で訊いてみたらどんなものかと思うが、どの社もそれぞれに利害関係にあるから、実際にやってみる度胸はないだろう。
オリンピックTシャツは、80年の時を隔てて再び幻に終わりそうな東京オリンピックの貴重な証拠品となるかも知れない。

◆1年延期を表明してから70日余り。
もうそんなに経ったかと思うのに、欧米のコロナ禍は終息の気配を見せない。いくら1年以上の時間があったところで、オリンピックどころでないのははっきりしている。

◆BSで朝方に放送されるワールドニュース、冒頭はイギリスBBCで、放送前24時間の新型コロナによる死亡者数を伝えている。昨日、おとといとも300名をはるかに越えていた。米国の死亡者はさらに多く、この1週間では連日、数百〜1300名にのぼる。

日本を含む東アジアのコロナ禍がそこまでの感染爆発に至らずにいるのは僥倖というべきだが、それにしても、TVにしろ新聞・雑誌にしろ、メディアは国内報道に明け暮れて海外の様子をわずかしか伝えない。
この数ヶ月のコロナ禍によって、物流にしろ人間にしろ国境を越えた往来が日常生活のすみずみに及んでいる時代であることを完膚なきまで実感させられたはずなのに、報道が内向きに閉塞していてどうするんだろう。つくづく骨の髄まで島国育ちの井蛙だと思わずにはいられない。

◆そのことが、留学生であれ実習生であれ、海外から日本にやってきた人々に向ける冷ややかな視線につながり、しばしば差別や人権否定の態度として露呈する。
在日の人々への理不尽な仕打ちを国のリーダーたちが煽ってはばからない。
同じ態度は日本人弱者に対しても容赦なくぶつけられる。
小池都知事ほかの「夜の街」発言はその一例に過ぎない。
上に倣えで下々は隠微な鬱憤晴らし。

イギリス、アメリカの市民が掲げる「JUSTICE」の文字は、我々も共有しなければならない。
メディアはそのための木鐸(ぼくたく)であるべきはず。

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遠島   大橋政人


子供のころは
遠足だったけど
大人になったら
お互い遠島だな

近くに住んでいるのに
なかなか会えない同級生の竹田君と
久しぶりに呑んだときの
竹田君の言葉

軍次君も
征雄君も
ずい分会ってないな
みんな遠い所へ流されて
離れ離れになってしまった

遠島というのはなんだね
竹田君の盃に酒を注ぎながら
私が言った

自分の島だけが頼りだから
それで余計に
遠島になっちゃうんかね
淋しいからときどき
一人花火なんか
空高くあげたりするけど

帰りしな
思い出したように
竹田君が言った

遠島なんだから
俺たちみんな
なんか悪いことでもしたのかな

なんか
大きな…… 



『朝の言葉』(思潮社、2018年)より。


◆同級生の名前が「軍」や「征」の字を持つのは、戦時下に生まれた男子に共通だろう。ほかには「忠」や「勇」。
生涯わが身に帯びて歴史を忘れないための貴重なしるしといえる。
問題はそれをふまえた歴史認識の継承なのだけれど。



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