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生命の畦をつくる[2020年02月20日(Thu)]

DSCN2778.JPG

種類によってはこんなにほころんだ桜もある。

*******

◆先日触れた『現代詩との出合い』という新書版の本に、菅原克己の「わたしのアンソロジー」という文章が載っている。
そこで取り上げた詩の一つに小熊秀雄(1901-1940)の遺作がある。

菅原にはその姉を通して識った詩人たちが何人か居て、小熊もその一人。
小熊の命名によるという、かの「池袋モンパルナス」の小熊の家に姪を連れて遊びに行ったことや、金に困った小熊に頼まれて絵を売ってやり、出来た五円を届けに行くと、早速それでバットを買いに奥さんを走らせた話などを書いている。

貧すれども鈍せずの小熊の、病に見舞われながらなお不羈の生き方は最晩年(と行っても未だ不惑の手前だ)の作品にもはっきりと示されている。


無題(遺稿)   小熊秀雄

あゝ、こゝに
現実もなく
夢もなく
たゞ瞳孔にうつるもの
五色の形、ものうけれ
夢の路筋耕さん
つかれて
寝汗浴びるほど
鍬をもつて私は夢の畑を耕しまはる
こゝに理想の煉瓦を積み
こゝに自由のせきを切り
こゝに生命の畦をつくる
つかれて寝汗掻くまでに
夢の中でも耕やさん
さればこの哀れな男に
助太刀するものもなく
大口あいて飯をくらひ
おちよぼ口でコオヒイをのみ
みる夢もなく
語る人生もなく
毎日ぼんやりとあるき
腰かけてゐる
おどろき易い者は
たゞ一人もこの世にゐなくなつた
都会の掘割の灰色の水の溜まりに
三つばかり水の泡
なにやらちよつと
語りたさうに顔をだして
姿をけして影もない


*岩田宏編『小熊秀雄詩集』(岩波文庫、1982年)によった。


◆五行目、「五色の形、ものうけれ」とは、「五族協和」をスローガンとして国民を動員した満州や、1940年開催予定だったのを返上するに至った東京五輪のことを暗に指していようか。

「おどろき易い者は/たゞ一人もこの世にゐなくなつた」というくだりなど、今の世においてもそのままじゃないかと思える。
肝をつぶすこと度重なれば、無法の濁世でできることは汚泥の堀割に身を潜めることぐらい。

◆何やら語りたそうな「水の泡」「三つばかり」とは、歪められた行政とねじ曲げられた司法、それに小馬鹿にされ通しの立法府の泥中から浮かんでくる怨嗟のつぶやきか。

それでもなお「この哀れな男」は、夢の畑を耕すことは決してやめない。

こゝに理想の煉瓦を積み
こゝに自由のせきを切り
こゝに生命の畦をつくる


希望は「若い生命のために」(「親と子の夜」ー同じく遺稿ーの最終行)残さねばならないものであるゆえに。



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