「イヌの仇討」[2020年01月18日(Sat)]
David Williams-Ellis「泉の少女たち(FOUNTAIN GIRLS)」
David Williams-Ellisは1959年生まれのイギリスの彫刻家。
横浜市泉区民文化センタ―・テアトルフォンテ前に立つ。
小ぶりの作品だが軽やかに空に舞う感じ。
あと2つ「森の精」「花の女神」がこの左右に立っている。
今年初めて雪が舞ったが、テアトルフォンテで上演中のこまつ座「イヌの仇討」(吉良邸討ち入りの話)に合わせたかのような天候。
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◆こまつ座「イヌの仇討」を観る(横浜市泉区のテアトルフォンテにて)。
忠臣蔵の吉良上野介を吉良邸の人々の視点から描く。
2017年の夏にも観ているが、初めて観るような印象。
3年足らずの間にはやこちらの記憶が薄れているのか、と思ったが、そうでない。
井上ひさしの芝居の例にもれず膨大なセリフ。
そのやりとりのテンポが良いのだと思う。
吉良の近習3人、盗ッ人、坊主の春斎。
中でも女中頭のお三様(西山水木演ず)。主君の名誉を何よりも重んじる一徹さが良く通る声でこちらの胸にしみてくる。
吉良上野介(大谷亮介演ず)の深みのある声も魅力的だ。
春斎の報告から大石内蔵助の様子を伝えられ、その心底を推し量ってゆく。
盗ッ人・砥石小僧新助(原口健太郎演ず)の口から世間が自分をどう見ているのか、知って行く。
その向こうに浮かび上がってくるのは「お上」である。そうした変容をまことにいい声で表現してくれる。
吉良は女中頭の諫めにも盗ッ人が語る下々の話にも耳を傾ける人物として描かれている。
さて吉良邸から永田町の首相官邸に目を転じれば、官邸の主が持ち合わせていないものこそ、諫める人間と街の声に傾ける耳だったことに思い至る。
現代の「行き当たりばったり」政治にもNO!を突きつけるべく動かずばなるまい。
*「イヌの仇討」は明日19日までの横浜・テアトルフォンテを皮切りに、全国を巡演する由。