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村野四郎「現代の冬」[2020年01月07日(Tue)]

DSCN2572.JPG
冬枯れのアシ原

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現代の冬   村野四郎

あの人は
あちらの世界からきて
わたしのそばを歩いている
ときには 昼近く
街の車輪の翳(かげ)のなかに消え
また遠い丘の向うに現れる
鉄の手の音をさせ
鉄の足おとを立てて
あの固い幻の人は
いったい何だろう

二つの世界の境界が
ガラスのように冷えて
冬陽がぼんやりと屈折し
そこに幾十年まえの
白い幻影たちも現れる

ときどき むこうの世界で
大砲の音がする
それがまた
透明なガラスの面をひびかせるのだ

あの白い影は
人なのであろうか
或は新しい霊魂なのであろうか

あの人は また後ろむきで
あちらの世界にはいっていく
白い背中に いっぱい
冬木のかげがある


詩集『実在の岸辺』(創元社、1952年)所収。
小海永二編『日本の名詩』(新装版。大和書房、1983年)によった。

◆「あの人」とは戦争もしくは戦死者の象徴だろう。「白い影」には核兵器のイメージも重ねられているかも知れない。
米ソ対立の東西冷戦期に書かれた詩だが、2020年を迎えたいま現在、この詩全体をおおう不安が現実味を帯びてくる。

◆「後ろむきで/あちらの世界にはいっていく」という表現には底知れない不気味さがある。
映画館の暗がりを一歩外に出れば映画とは別の日常に戻るだけだが、この詩が現示する光景は、冬の日ざしの中にあり、我々もまた「後ろむき」に「あちらの世界」に召喚されて行かない保証など、どこにもないのだ。


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