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〈それは/すべてをみないことだ〉[2019年11月12日(Tue)]

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*******

◆今日の朝刊には11月10日の即位行列の「記念号外」が折り込みで入っていた。
購読者サービスのつもりなのだろうが、手間ヒマをかけるべき対象が違うだろうと思う。

たとえば国会・官邸・行政の腐敗の数々。
中東に目を向ければ冬を迎える難民の人々、香港現地から次々と届く市民迫害の光景、とりわけ銃による若者の犠牲

それらを伝えないメディアは市民の目を塞いでいるに等しい。

まるであきつ島大和の国は〈国稚(おさな)く浮きし脂の如くして、くらげなすただよえる〉と「古事記」にあるように、どことも知れない混沌の海を頼りなく漂うクラゲになり果てた観がある。

*****

金井直(かないちょく)の次の詩は、権力によって盲目であるよう強いられた若者たちが、それでも奪うことのできない自由と尊厳を手にするために発し続ける、ふかい所からの怒りと魂の叫びを表しているように思える。


無実の歌  W     金井直

お父さんたち お母さんたち あなたたちのせいではないのなら
ぼくたちはなぜ生れたのでしょう 盲目に
生んでくれたのはなぜでしょう あなたたちのせいではなく
とざされたまぶたのあいだから 涙がしみだしてきます
しみだしてしずくとなって 次々とぼくたちの頼をつたって落ちるのです
ああ ぼくたちのかなしみだけはなぜ とざすことができなかったのでしょう
涙はつめたいものでした とめどなく流れるものは
とめどなくあふれる涙――けれどもぼくたちは
生きているのです ここに こうして居るのです 生きているのです

ごらん 盲目の少年と少女が
そこに抱合っている 少年は甘えるように
こっちをむいて笑っている 少女は
母親のような仕種で少年の顔をみている
少年のうれしそうな眼はもう
それ以上ほそくはならないのだ 少女の
横顔もやさしさにみちている
ほほえみながら まつげにおおわれた眼で
少年を見守っているようだ
彼等はもう知っているのだ 何が
大切なのか 何が仕合わせなのか
それを二人で はっきり見定めようとするかのよう――そのために
彼等は眼をあけることができないのだ あるいは
みてしまった互いの内部を いつまでも
忘れないために まぶたをとじているのだ……

ぼくたちにはみえる 現実の
きたないもの きれいなもの どれが
そうなのか ぼくたちには
よくみえる ぼくたちのこころには
つらいもの やさしいもの どれが
そうなのか ぼくたちには
よくみえる けれどもみえないぼくたち
ぼくたちをつきたおす者それが誰なのか
誰なのかがよくわかる おお ぼくたちの手は
自分で起きるために在るのだ 傷のありかと
怒りを知るために在るのだ――音立てて
倒れるぼくたちの杖――音立てて
寄せてはかえす波のような悪意にもまれ
こころにもまれ もまれながら
ぼくたちにいちばんよく見えるもの それを
とり落すまいとする なくすまいとする
ふたたびかえってくることのないそれを――いや
この世にはもう無いかもしれぬそれを
ぼくたちはぼくたちのくらやみで摑もうとする
ああ あいている眼にはみえないもの……

あいている眼が
すべてをみていると みえるとおもいすごして
たったひとつのものすらみないこと
みることができないこと それは
すべてをみないことだ ひとつのものを
みるように みなければならぬと
ぼくたちの眼はつくられた ぼくたちに
すべてがみえるようにと……そのために
ぼくたちの上にもふりそそぐ光 ぼくたちのかなしみのように
ふりそそぐ光 それをぼくたちはあびる
雨の雫にぬれる木の芽のように そして
ぼくたちはとらえる ぼくたちの手にふれるものを
無明をとらえる すぎゆくすべてをとらえる
ぼくたちに触れるものすべてを……触れるものすべては
ぼくたちのくらやみを通っていく……

みて下さい お父さんたち お母さんたち
これは粘土細工です ぼくの苦しみから
ぼくの悲しみから いいえ これはぼくのくらやみの
いちばんふかいところから聞えてくる声です
もう これは粘土ではないのです ほしがる口や
ほしがる手を造ったのではないのです これはもう
叫びそのものなのです 「眼がほしい」ことのすべてなのです
ああ お父さんたち お母さんたち
ぼくの眼のようには決してとざすことができない口
眼がみえるようになるまではひっこめることができない手を
みて下さい……みて下さい…… 


*思潮社現代詩文庫『金井直詩集』(1969年)より


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