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地下帝国の青空[2019年11月05日(Tue)]

DSCN2037.JPG

クコ(枸杞)の実。
たわわとは言えないが、今年も確かに実をつけていたのが先週のこと。
週が改まったら、どなたか摘んでいった模様で、キレイになくなっていた。

11月に入って、さすがに、朝は吐く息が白い。

*******


地下帝国のバラード   吉野弘

地下帝国の地下工場に、働くひとが九人いた
一人の娘が青空を想った、一つのキイを叩き乍ら
二人の若者が青空を想った、二色のランプを見つめ乍ら
六人のパパが青空を想った、六つの音階を聞き分け乍ら
てんでに結ばれて縫い目のない青空になった
その青空に太陽が昇り、九人の働くひとの肌を灼いた
ああ、なんて美しい太陽!
しかし監視室のテレビは、それを受像できない
そのくせ、ひとを、うまく働かそうてんだ


◆働くことは、そもそも陽の光のもとで行われるものだったはずだが、空を見上げ腰を伸ばして汗をぬぐうのもムダな時間とみなす現代の労働は、もっぱら陽の射さない地下で行われ、精励恪勤(せいれいかっきん)怠りないか、モニターにより常時チェックされている。

◆監視下にあっても精神の自由は想像の翼を広げようとするので、働く者たちが青空を思い描くことに不思議はない。
ところが、監視する者にはそれが見えない。それゆえに、地下の彼ら働く者たちがふとした時に笑みを見せ、血色さえ良さそうに見えるのが不思議でならない。
監視員から報告を受けた支配者は、監督者が手ぬるいからだろうと決めつけて作業量を増やすよう指示する。

◆ところが労働が厳しいものになっても人々は青空を想うことをやめない。それがために銘々が拡げた想像の青空は自由につながって行く。そこに太陽が昇り、彼らの首筋や腕を灼いて行くことにも不思議はない。

しかし彼らの精神に於いて起きていることが、監視者にも、報告を受ける支配者にも見えない。
地下帝国で働く者たちの日焼けした笑みの理由が分からないのだ。

見えないもの、見ても分からぬものは恐怖を引き起こす。
かくして支配者はノルマを極限まで引き上げるよう金切り声を上げる……

◆この先に起こることは想像するしかないのだが、想像の自由を持たない者たちの敗北は明らかだろう。

小海永二・編『精選 日本現代詩全集』(ぎょうせい、1982年)によった。


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