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小さな呪文「幸あれ」[2019年04月22日(Mon)]

DSCN0552スイスチャード.JPG
赤い葉脈が目を引く葉野菜。スイスチャードというそうだ。和名はフダンソウ(不断草)、年間通じて取れる、という意味らしい。

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「幸あれ」   徳弘康代

明るい雨がパラッと降りだして
小さい自転車にのった子供のうしろを
透明の傘をさした親たちが歩いている
そのさらにうしろを歩いていると
「幸あれ」という言葉が降ってきた

それで「幸あれ」と心の中で
となえてみると
前の三人の辺りの空気が
光る雨で明るく見えた
それはとても自分の心によかった

地下鉄で前に座っている
古文練習帳をやってる男子に
「幸あれ」と心でとなえてみた
新聞をよんでるおじさんにも
「幸あれ」ととなえてみた
それはとても自分の心によかった

ということで
いやなやつの前でも
となえてやろうと思ったが
それはやっぱり
ちょっと無理
だった


徳弘康代『音をあたためる』(思潮社、2017年)

◆空から降って来た良い言葉は、啓示のようなもの。
世界が違って見えるのは自分ではないものの力による。
そのようにして受けとめた「幸あれ」という言葉を、こんどはみんなに分けてあげたくなる。
それは世界全体に向けた祈りなのだが、小さく心で唱えるだけの方が、「心によい」ことが続いてくれるように感じる。

「いやなやつ」にも「幸あれ」と唱えてやろうとやろうとしたが、やっぱり止(よ)す。
自分の心に良いことを欲張り過ぎる感じがするし、「いやなやつ」が「少しヤなやつ」ぐらいに変わった気がしないでもないから。
それにその「ヤなやつ」にも、「かくあれ」的な明るい言葉が降って来ないとは限らないから。


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