***
さくらの はなびら まど・みちお
えだを はなれて
ひとひら
さくらの はなびらが
じめんに たどりついた
いま おわったのだ
そして はじまったのだ
ひとつの ことが
さくらに とって
いや ちきゅうに とって
うちゅうに とって
あたりまえすぎる
ひとつの ことが
かけがえのない
ひとつの ことが 『ポケット詩集』(童話屋、1998年)より
◆「万朶のさくら」というけれど、ボーッと見ていただけでは何も見なかったに等しい。
いちまいの花びらが地面にたどりつく、それを見つめる眼だけが世界の呼吸を感得する。