コブシ咲く[2019年03月13日(Wed)]
コブシの花がほころび始めた。
横浜・関内駅前で。
地元・湘南の奥座敷(を勝手に「オアシス」と呼んでいる)も負けていない。
午後の逆光にボウッと烟る風情もまた佳し。
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村への道 木村迪夫
やわらかな陽射しを夢みて
冬の河を遡(のぼ)ってきた農夫の姿がある
流れから這いあがり
水しぶきを躰でふりはらうと
岸のむこうの
萌えいそぐ田のなかの雑草(くさ)に腹這い
仰むけになり
頰うつ風に逆らうこともなく 眠る
百年の孤独のような凍えから解放された
農夫は
この先の百年の村のかたちを眼のうちに
黄色にけぶる空と地のはるかな接点を
歩きはじめる
昨日
過疎の村の学校の
木造校舎でむかえた入学式の子供たちのように
顔をひきつらせ
両手で胸をなでおどらせながら
病のあとの
疲労感はまだ五躰を包囲してやまないが
寒い河の流れの時節に訣れをつげ
ゆっくりと
村へとつらなる道の坂を
越える
木村迪夫(みちお)『村への道』(書肆山田、2017年)より