「父と暮せば」が始まった[2018年06月06日(Wed)]
安田侃(やすだかん。1945〜)「妙夢」(2006年)
◆六本木のミッドタウンで。
安田侃の作品にはどこかで出会っているが、いま思い出せない。
閉館した鎌倉の近代美術館であったか。
◆関東は梅雨入り。
作品が雨に濡れていく変化が面白かった。
しかし立ち止まって見入る人はほとんどいない。
◆六本木交差点知覚の俳優座で始まった《こまつ座第122回公演》「父と暮せば」を観ての帰り。
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◆井上ひさしの傑作「父と暮せば」は、今回山崎一が父の竹造、伊勢佳世が娘の美津江、という新キャストで始まったばかり(演出・鵜山仁)。
客席はこれまでより若い世代が増えたように思える。
終盤、そっと鼻水をすすりあげるのがあちこちから聞こえる。
こういう芝居の後はしばらく明るい外には出られない。
しばし感想を書くなどしてからようやくロビーに下りる。
出口のスタッフに「ありがとう」の声をかけながら出るお客さんが何人もいた。
「父と暮せば」の中でもいちばん大事なせりふ「ありがとありました」を、観客も心の中で何度も何度も響かせているのである。
初演から25年、四半世紀の時間によって磨き上げられた作品だが、芝居の設定は昭和23(1948)年の夏。そこから数えて70年経た「いま」と、1945年8月6日その日に始まる3年間と。二つの時間を、演じる者も観る者も生きることになる。
*6月17日まで俳優座劇場。その後6月21日川西町、7月14日仙台で。